074.神原と門
入ることが難しい。
今までに感じたことのない空気感だった。
とまあ、カッコつけて言ってみたものの、京都に来るのは初めてだから当たり前のことだった。
「やーっと着いたでござるな」
「ケンは妙に旅行慣れしてる感じだな。さては京都も初めてじゃないな?」
「何回も来てるよ。じっちゃんに連れられてね」
おいおい、じっちゃんがどうのこうの言ってる人の周りでは殺人事件が起きるんだぞ。
言葉には気をつけろ。
「それでどこに行くんだっけか?」
「神原ってところ」
「そこなら行ったことあるでござるよ」
「ほんとかよ!道案内頼むわ」
「と言いたいところだけど未開の地でござる」
「なんでちょっと見栄を張ったんだよ」
仕方がない、駅員さんにでも聞くか。
ちなみに僕は方向音痴。
逆に翔子はめちゃくちゃ地図をよむのがうまい。
もともと女性は地図を上空視点から把握するのに長けている、男性は自分目線でしか把握できないというのをどこかの本で読んだことがある。
生物学上苦手なんだから方向音痴は僕のせいじゃない。
「あのー、すみません。道を尋ねたいのですが」
ケンが駅員さんに話しかける。
なんかゲーム序盤のイベントみたいな尋ね方だな。
「はいはい、いいですよ。どこへ行きたいのかな?」
「神原ってとこです」
「ああ、君たちも教会の支部の見学に来たんだね?」
え?
どゆこと?
「神原には教会の支部があるんだよ。まあその建物には限られた人しか入れないんだけどね」
えぇ、僕教会試験に受かったとはいえそれを証明できるものまだ何もないんだけど。
国語主任に話とか通ってるのかな。
「それで神原にあるその建物にはどうやって行けばいいですか?」
ケンばかりに聞かせるのも申し訳なくなり、僕が尋ねる。
「バスで行けばいいよ。教会国語支部前ってバス停があるから」
どっかの暗殺一家を思い出すな。
「わかりました。ありがとうございます」
「とりあえずそのバスに乗るでござるよ」
「そうだな。とりあえず歩いて行かなくてよくてよかったよ。疲れるし」
僕たちはバスに乗って国語主任がいるであろうその場所を目指した。
「しかしその国語主任も変わってるでござるな」
「ん?なんの話だ?」
「いや、バス停になるくらい有名ってことは自分の居場所を名言してるってことじゃん」
「うん、それがなんで変なんだ?」
「じゃあキョウは異教主任の居場所って知ってる?」
「いや、誰も知らないよ」
「ほら。普通は敵対組織がいたら襲撃されるかもだから自分の居場所は隠した方が得じゃない?」
「うーん、悪いことしてる組織ならその理論は当てはまるけど、そうじゃないからなぁ。警察が自分の居場所を隠してるのも変じゃない?」
「まあそうでござるが。教会は警察とはまた別だし、やっぱり変な人だと思う」
ケンのいうこともわかる。
確かに異教はねぇちゃんを襲撃し、情報を聞きだそうとしていた。
国語主任の居場所ははっきりしているのにねぇちゃんが襲撃された。
つまりだ、異教が手を出せないくらい強いってことか?
それとも話が通じない相手ってこと?
どっちにしても今からその人物に会わないといけないのか。
僕はさりげなくバスの中を見渡した。
流石に暗殺一家行きのバスの中みたいにやばそうな人はいなかった。
「次は教会国語支部前、教会国語支部前、お降りの方はボタンを押してください」
運転手さんのアナウンスが聞こえた。
ボタンを押し、数分してバスが止まった。
「またのご利用をお待ちしています」
バスが去っていく。
降りたのは僕たち2人だけだった。
「なんか想像と違うでござるな」
確かに。
豪邸とか、ホテルというよりはレストランみたいだ。
ここが教会国語支部……か?
と、訝しんでいると、
ギィ……
ひとりでに目の前の扉が開く。
開かれた扉、つまりは扉の内側に、
どなたもどうかお入りください。
決してご遠慮はありません。
まるで食べようとせんばかりの文言が金文字で書かれていた。
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