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071.科と止む

第4幕、これにて幕引き。

第5幕へ続きます。

 感動の再会……とまではいかなかったが、感極まるものがあった。

実際に翔子は泣いてるし。

「ねぇちゃん、意識戻ったの!?」

「2時間くらい前にはね」

「話したいことはたくさんあるけど、えっと」

「教会試験、受かったんでしょ?」

「え……どうしてわかるの?」

「わかるわよ、あなたのねぇちゃんなのよ?」

幼馴染に続いてねぇちゃんもこえーよ。

エスパーかよ。

とまあこんな感じで、ねぇちゃんの意識は戻った。


「しかし杏介も国語だもんなぁ。国語主任はなんというかちょっと難しい人というか……」

「あ、あの」

「どしたの翔子ちゃん?」

「ずっと気になってたんですけど、普通国語「科」主任とか、数学「科」主任ですよね?なんで教会のリーダー達は「科」をつけないんですか?」

「そっかそっか、まだ受かったばっかりだもんね。説明も何も受けてない状態だ。じゃあ私が教えてあげる」

いや、そんな些細なことよりも国語主任の話の方が気になるが。

なんだよ難しい人って。

そんな人に僕会いにいかなきゃなんだけど。


「「科」という漢字はね、種類とかを表すの。学校でその種類の勉強を教える人は教諭。国語を教えるから国語科教諭。数学を教えるから数学科教諭ってかんじ」

「ふむふむ」

「私もそこまではわかります」

「教会はね、教えるのが専門じゃないの。その教科を「使う」エキスパートなのよ。それである人が「教会のメンバーは先生と呼ばれますよね?でも同じ教諭、教員でも目的が違うんだからせめてリーダーの名称くらい分けるべきだ」って。それで教会主任には「科」がついてないのよ」

「なんだか難しい話ですね」

「まあ簡単に言えば学校の先生と教会のメンバーを区別するために名称が違うってことよ」

「ふーん。それでその名称を変えようって言い出したある人って……」

「杏介の察しの通り今の国語主任よ」

やっぱりか。

なんだかクセのありそうな人だな。

今から会うのが億劫になってきた。


「あれ?でも理科は「科」がついたままじゃない?」

「理科の中で明確に分野を区切るから理科は理科って強固に主任が主張したらしいわ」

理科主任もめんどくさそうな人だな。

「それで理科主任と国語主任はあんまり仲が良くないのよ」

小室先生もそうだけど仕切る立場の人ってみんな癖が強い気がする。


「杏ちゃん、あんまり長くいても。まだお姉さんは意識が戻ったばっかりだし」

「そうだね、とりあえず意識が戻ってほんとによかった」

「2人には心配かけたわね、ごめん。現場復帰はまだ無理そうだけど。杏介は毎日お見舞いに来てくれていたんでしょう?ありがとう」

「と、当然だよ!家族だし」

それだけだよ?

いや、本当に。


「さ、行きましょ!それじゃお姉さん、また来ます!」

「ええ、杏ちゃんのことお願いね」

「何をお願いするんだよ。それじゃまたね」

会話のキャッチボールができることがこんなに嬉しいと思ったことはなかった。

僕たちは病室を後にした。


 家への帰り道、

「杏ちゃん明日学校行く?」

と聞かれた。

「あ、確かに。教会に入るのはいいけど学校ってどうなるんだ?」

「教会のメンバーは基本的に高校の単位は免除になるみたいよ。高卒認定は取れるってかんじ」

なるほど。

「じゃあ別に学校行かなくてもいいじゃん」

「そーんなこと言って、明日は学校行くんでしょ?友達に会いに」

だからなんでわかるんだよ。

幼馴染こえーよ。

「まあ、当たらずとも遠からずって感じかな」

僕は適当に相槌を打つ。

「私は今日準備をして明日から主任に会いに行くわ」

「快斗に負けないくらいせっかちだな」

「早いに越したことはないもの。杏ちゃん。離れてても寂しくなーい?」

「寂しくないさ」

嘘だけども。



「私は、寂しいよ」



 不覚にも心打たれた。

「で、でもこれで会えなくなるわけじゃないし、私もちょこちょこ学校行くつもりだし、毎日メールしてよね」

「お、おう」

不意打ちを喰らったせいで適当にも相槌を打てない自分が情けない。

「それじゃ杏ちゃん、またメールでね!」

「ああ、またな」

翔子は家へ向かった。


 ピロリン


 僕のスマホが鳴る。



どこにいても杏ちゃんのことは私が守るからね



 まったく。

メール打つのが早すぎんだよ。

また僕は守られる側か。



 今度は僕が守るから



僕は片手で返信しながら家へ入った。

雨はようやく止みそうだ。

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