067.票と信用
「小室先生、ちょっと行ってきます」
「ああ、無理をするなよ。重松先生」
「大丈夫ですって、すぐに戻ります」
そんなやりとりをして重松さんは姿を消した。
「小室先生」
「なんだ海崎?」
「小室先生は二谷君が異教のメンバーだと知っていたからこの最終試験に関してはノーコメントだったんですか?」
「相変わらず海崎は勘が鋭いな」
「間違った方向に進む生徒を止めるのも教員の仕事じゃないんですか?」
「生徒を信じるのも教員の仕事だ。私は二谷が戻ってくることを信じている」
「そう……ですか」
「ほんで、うちらはどーすればええんや?重松さんはどっか行ってもうたし、うちらはまっとけばええんかな?」
「ああ、待っていたまえ。君たちは見事異教徒を当てた。十分に合格に値するだろう」
「よかった」
「当然だ」
「早く帰ってきて欲しいですね。説明とか色々あるだろうに」
それぞれ西園寺さん、荒川さん、宮坂先輩の言葉だ。
そういえば、まだ解決していないことがたくさんある。
例えば、
「おい、翔子、快斗、麗花。君らは誰に投票したんだ?」
「「「荒川さん」」」
「だよなぁ。僕も荒川さんに投票した」
荒川さんがギロッと睨んできたような気がしたのでちょっと声を小さくする。
「でもそれだと計算が合わないんだよ。二谷が5票だろ?」
「あれ確かに変しょ。俺らで荒川さんに5票なはずっしょ」
「それは、多分、二谷君が自分で自分に投票したんだと思うわ」
「え?」
僕は麗花の言葉に思わず間の抜けた声を出してしまう。
「なんでそんなことするんだよ?」
「最終試験は異教徒を当てること。二谷君が荒川さんに投票してしまうと自分が異教徒とはバレないかもしれないけど、試験には合格できないでしょ?」
「あ……」
「全くよくできた最終試験だわ」
なるほど。
確かに裏切りものにとっては苦渋の選択だったというわけか。
だけど、だけど二谷は。
自分に投票したのは僕たちを合格させるためなんじゃないだろうか。
自分が異教徒だとバレるのをよしとしたうえで、僕たちの味方をしてくれたんじゃないだろうか。
二谷と初めて対面したとき、僕と似たような雰囲気を感じた。
ねぇちゃんを追っている僕のような雰囲気を。
二谷、僕は信じてるからな。
「追手がいますね。排除しますか?」
「おいおい、孝弘、お前じゃ勝てないだろ」
「兄さん、甘く見過ぎ。勝てるよ」
「相手は技術主任だろ?俺が行く」
「早くかたをつけて戻ってこいよ」
「わかってる」
そう言うと、高速で動く3人のうちの1人がとある山の麓へと降りる。
そしてそについていくように追手は降りた。
「やはりあなたが追ってきましたか。重松教会技術主任」
「ふん。俺が用があるのはあんただけだ。大家異教技術主任」
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