066.裏切りと迎え
「さて、最多得票となった二谷。何かいうことはあるか?」
「ありません。これでも僕の教科は数学。数字は嘘をつかないのは自分が一番よく知っていますから」
おいおい、なんでそんな自分が犯人だって認めたような口ぶりなんだよ。
「それで?結局どーなんや?二谷で正解なんか?」
「ああその通りだ。俺は二谷が異教徒だと確信している」
そんな……。
嘘だろ?
「宮坂の推理が概ね的を得ている。測定器を作ったのは俺だ。あとでごねられても困るから100付近の数値は出ないように設定してあった。100が出たということは、俺の測定値の基準をわかった上で攻撃されたということ。数字は嘘をつかない。だがな、ちょうど100はやりすぎだ。そもそも100以下は不合格。小数点は説明になかったからほんとうなら数値が100のお前は落ちてるんだぞ?」
「あまり強すぎる数値も変だと思って狙いすぎてしまいました。僕の失敗ですね」
「まあその100という数値のおかげでこちらも君をもう少し泳がせておこうと思たんだがな。異教徒が接触してくると思ってな」
「その予感は正しい」
「全く、最後の最後で爪が甘い。だからお前はダメなんだ」
新たな人影が二つ。
誰だ?
両方知らないおと…こ?
いや、片方は見覚えがあるぞ。
というより似ている。
二谷に。
「最終試験までバレずに残ったんだから60点くらいはちょうだいよ。兄さん」
「60点あったら大学の単位が取れてしまうだろ。20点だ」
「あいからわず手厳しい」
「で、異教数学主任と異教技術主任がそろって何しにきた?」
重松さんの目つきは怖い。
「もちろん、不出来な弟を回収しに。このままではあなた方教会に拘束されかねない」
「ふん、泳がせておいて正解だったというわけか」
「どき!爆音波!!!」
ボンっと大きな音がして二谷兄弟に一瀬さんが向かっていく。
「y=1/x」
音の衝撃は届かない。
二谷のバリアは前よりも明らかに硬度が増している。
「うちが用あるんは兄貴の方や。弟くんは関係あらへん。下がっとき」
「それは無理な相談ですね。数学主任を攻撃しようとする人から守るのも部下の仕事ですから」
え、一ノ瀬さん二谷のにぃちゃんのこと知ってるのか?
なんかすげー怖い形相で睨んでるけど。
僕はその表情に見覚えがあった。
というよりその顔をした覚えがあった。
僕が明石を見るときの表情にそっくりな気がした。
もちろん自分では自分のそんな顔は見れないが近しいものを感じた。
「バレては仕方がない。ただ消え去るのみだ。孝弘」
「わかってるよ兄さん」
「ちょっと待てよ二谷!」
僕は黙っていられない。
「このまま消える気かよ!?ほんとに異教徒になっちまったのかよ?理由は!?」
「泉君、君は姉が教科のメンバーだよね?そして弟の君も教会に入ろうとしている。僕の兄は異教徒だ。僕が異教徒でもなんらおかしくはないんじゃないかな?」
「でも二谷!あのとき、初めてあったとき「兄を止めたい」って言ってたじゃねーか!」
「……それに関しては嘘はついていない」
「じゃあどうして、どうしてお前は異教側に立ってるんだよ!?」
「おい、孝弘、早くしろ」
「わかってるよ兄さん。点P」
二谷がそう言うと3人が光に包まれ、まるで動く点Pのように高速で移動し始める。
くそ、追わなきゃ!
と、僕が走り出そうとすると、麗花に止められる。
「荒川さんの攻撃を余裕で防いだのよ?私たちより圧倒的に教科の力が強い。そんな相手3人を追いかけてどうにかできるとは思えないわ」
……その通りだよ。
残された僕たちはただ力なく項垂れてた。
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