062.スパイと詮索
皆さんも考えてみてください。(その2)
理解が追いつかなかった。
この中に異教のメンバーがいるっていうのか。
この最終試験に残った9人の中に。
僕だけではなくみんなが驚いている様子だった。
「それは本物の異教徒がいるということですか?それとも重松さんが用意したいわゆる人狼役を当てろということですか?」
冷静な麗花が質問を投げかける。
「本物の異教徒がいると俺は確信している。教会に入りスパイになるつもりなんだろう」
え、ということは重松さんは知ってて黙っているのか。
僕たちに危険が及ぶかもしれないっていうのに。
「小室先生!小室先生は何か知っていますよね?」
「……泉、最終試験に関しては私は何も喋らない」
「え……なんでですか?」
二次試験はあんなにノリノリだったのに。
「私は何も喋らない」
こうなっては本当に小室先生は何もヒントはくれないだろう。
「10分後、俺の合図で異教徒だと思うものの名前をこの紙に書き渡してもらう。同票の場合は再度やり直す。その他の質問は一切受け付けない」
「ちょ、ちょっと……」
「それでははじめ」
落ち着け、重松さんは確信していると言った。
そう言い切るからには何か根拠があるはずだ。
それにこれは試験だ。
僕たちにもわかる「何か」があるはず。
「状況がようくわかんないっしょ!」
快斗が頭を抱える。
抱えたいのは僕も同じだよ。
「落ち着いて、菅原君。10分しかないのよ」
「でもこの中に異教徒がいるんっしょ!?落ち着いていられないっしょ」
「重松さんも言ってたでしょ?教会にスパイとして入り込むことが目的だろうって。ということは私たちに危害を加える可能性は低いってことよ」
「そういう意味じゃねーっしょ」
「口喧嘩はええけどなぁ、時間があらへんねん。そっちでなんか知ってることあるんなら情報だしや」
一ノ瀬さんが一際大きな声で会話を遮る。
確かに、ここは出せる情報は出すべきだろう。
だけど、
「私たち異教について知っていることなんてありません」
麗花が言う。
その通りだ。
僕たちは異教について何も知らない。
襲われたことはあっても情報なんて……。
……え?
いや、ちょっと待て、翔子は異教に誘われてたんじゃなかったっけ。
それに二谷だって。
二谷のにぃちゃんは異教徒だったはず。
僕も異教理科主任と関わりあるし。
「自分が異教徒じゃないことは自分が一番よーわかっとる。残りの8人の中の誰かが異教徒や」
「私たち5人も違います。私たちの学校は一度異教に襲撃されて、先生方が厳しく警戒してくださっていました。なので異教が接触できる機会なんてありませんでした」
「ほな、宮坂、西園寺、荒川の誰かかいな?」
「俺らは異教じゃねーよ」
荒川さんは西園寺さんの方に目をやりながら言った。
「俺らはお互いが異教じゃねーってことはわかってる」
「なんや怪しいなぁ。じゃあ宮坂はどうや?」
「もちろん違いますよ」
まあ、こうなるよね。
全員が白だと言っている。
人狼みたいに何か役職が出るわけでもないし、どーやって推理すれば……。
「私がなんとかするわ」
西園寺ははっきりとした声でいい放った。
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