058.待ち時間と拍子抜け
その後も淡々と面接は進んでいった。
一ノ瀬さんの次は荒川さんが(まだ顔が怖いのでこの人苦手だ)、荒川さんの次は宮坂先輩が面接を受けた。
重松さんは親睦を深めておけと言っていたが、試験の最中ということもありやっぱり会話はギクシャクしているように感じた。
すでに面接が終わっている人たちもなんも教えてくれないし。
そして宮坂先輩が帰ってきた。
ピンポンパンポーン
「次は菅原、3-1に来るように」
「おーし、やっと出番だ!待ちくたびれたっしょ!」
「戦うわけでもないのにやる気満々だな」
「満々ってわけじゃないけど何にもしてないよりはマシっしょ」
だんだん快斗がせっかちというより大雑把なんじゃないかという気もしてきた。
「どんな感じだったか後で聞かせてくれよ」
「おう、任しとけ!行ってくるっしょ!」
快斗は1-1を後にした。
3-1の前。
俺は柄にもなく緊張していた。
杏介とかの前だと気楽でいられるんだけどな。
友達の力ってやっぱりすごいんだなと適当に考える。
「入れ」
「はーい、失礼します」
一応面接なので礼儀正しく答える。
これでも敬語は完璧なつもりだ。
「菅原、そこの椅子に座りたまえ」
「わかりました」
「いくつか質問をするが、この面接の結果が教会試験の結果に関わることはない。安心しろ。別にいつも通り喋ってくれればいい」
「はい、わかりました」
「いつも通りでいいと言っている。一次試験の様子は全て見ていた。能力や性格もな。君は理科、主に風力に関係する力を使っているようだが、何か思い入れがあるのか?」
「……空を飛びたかったんです」
「空を?」
「はい、小さい頃は紙飛行機を飛ばすのが好きで、よく親父と紙飛行機を公園で飛ばしていました」
「それで?」
「それで空はこんなに広いのにどうして俺は、人間は自由に空を飛べないんだろうって思ったしょ」
「ふん、喋り方が戻ってきたな。よかろう。で、理科の教科を使っているわけか」
「まあ、思い出が多いって感じっす。逆に質問していいっすか?」
「ああ」
「重松さんはSNSの力を使ってたけど何か思い入れがあるんしょ?」
「そうだ。だが君たちに話すつもりはない」
ないんかい。
俺は心の中で突っ込んだ。
「ここでのことは他の8人には言わないでほしい。公平性が保てなくなるからな」
「さて、次の質問だ」
快斗が1-1を出てから10分くらい立った頃、チャイムがなって、麗花が呼び出された。
麗花が教室を出るタイミングで、快斗は戻ってきた。
「おかえり快斗。どーだった?」
「んー、詳しくはいえないけど、面接っていうよりは質問会みたいな感じだったっしょ」
「質問会?」
「おう、なんかおしゃべりしてる感じ。かしこまって行ったら拍子抜けだったっしょ」
ふーん。
そんなもんか。
麗花の次に翔子が呼ばれ、そして僕の番が来た。
ピンポンパンポーン
「泉、3-1に来るように」
「お、杏介出番だぞ」
「うん、行ってくる」
1-1のドアを開けると、ちょうど翔子が戻ってくるところだった。
「翔子お疲れ、行ってくる」
「杏ちゃん!いってらっしゃい。……気をつけてね」
「???気をつける?何にだ?」
「重松さんの言葉によ。飄々としていて、かなり深層を覗かれるような感じだったわ」
いや、怖。
まあ今更怖がっても仕方ないんだが。
「わかった」
僕は短く返事をして足早に3-1の前に向かう。
「きたな、泉。入れ」
「……失礼します」
僕は一度深く息を吸い込んでドアに手をかけた。
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