056.二次試験終了とあの色
「んで、トランポリンってどうやって跳ねるの止めるの?」
「中学の時体育で習ったっしょ?こうやって、尻でとまんだよ!」
快斗が見事にトランポリンから跳ねずに着地する。
ふむ、なるほど。
ああやって体をL字にして止まるのか。
僕も体をL字にした瞬間トランポリンが消えた。
グシャっと水が染み込んだグラウンドの土に落ちる僕。
カッコわる。
いや、もう雨やら泥やらで服汚れてるからいいけどさ!?
「翔子!教科の力消すタイミング!僕落ちたんだけど!?」
「ごめん杏ちゃん。私の力も限界だったみたい」
まあ1000人近くが乗るトランポリンを出し続けていたんだ。
当然か。
とはいえ、僕以外の受験者は無傷で済んだ。
「いやあ、一本取られたよ。まさか私ともあろうものが栞を盗まれるとは」
重松さんは言葉とは裏腹に上機嫌だった。
「さあ体育館へ戻りたまえ。この二次試験、合格者は9名だ」
9名?
僕、翔子、快斗、麗花、それに最初に栞をとった二谷。
ということは小室先生から4人も栞をとったのか?
すげーな。
僕たちは体育館に戻ってきた。
体育館の中は原型を成していないくらいボロボロだった。
いかにすごい攻防が繰り広げられていたのかがわかる。
「お、泉やん。その顔つきやと栞取れたんか?」
「ええ、一ノ瀬さんは?」
「この通りばっちしや!」
一ノ瀬さんは栞をちょっと誇らしげに見せてきた。
「小室先生からとるなんてすごいですね」
「いやぁ、とるというかもらったというか……」
歯切れ悪く一ノ瀬さんは小室先生に目線を送る。
「泉、余計な詮索は無しだ。私が認めたんだからそれでいいだろう?」
まあ、小室先生がいうことに間違いはないのだろう。
「さて、改めて、二次試験に合格したもののみここに残れ。そのほかの受験者は速やかに体育館から出るように」
しげしげと受験者たちが退出する。
僕もああなっていたのかもしれないと思うと、ちょっともの寂しい気持ちだ。
「快斗、服がぐっしょり濡れて風邪ひきそうだからお前の力で乾かしてくれね?」
「あ、菅原くん私たちもお願い!」
翔子と麗花も僕の提案に乗っかる。
「オッケー!風速5m」
おお、ちょうどいい風だ。
これならすぐに乾きそうだ。
と、翔子と麗花の方をチラッと見ると……。
白と青だった。
なんだやっぱり傘と同じ色じゃないか。
「ちょっと菅原君!風強すぎ!!」
ゴンッ
ゴンッ
翔子と麗花から殴られる。
痛い。
「なんで僕が殴られるんだよ!?風ふかしたのは快斗だぞ!?」
「見る方が悪いのよ」
「…杏介最低」
僕の評価は下がりっぱなしだった。
「さて、そろそろ服は乾いたか?」
「あ、はい大丈夫です」
僕は重松さんの問いに殴られた場所をさすりながら答える。
「今回の教会試験は次で最後だ。2時間後、3-1教室で行う」
おお、次で最終試験か。
もっとあるのもだと思っていたので次で最後と聞いてほっとする。
「待ち時間の間は9人で話でもして親睦を深めておいてくれたまえ。将来の同僚になるのかもしれないからな。ただし」
ただし?
「10分程度1人づつ俺と話をしてもらう。最終試験前の面接とでも思ってくれ」
怖えよ。
就職試験みたいじゃん。