054.色と合流
『おうたえほん』を知っていますか?
マイク付きの絵本です。
「知らない教科の力」は使えない。
重松さんは確かにそう言っていた。
つまり監視した中での出来事のみをインプットしているということだ。
…………。
よし、考えはまとまった。
まずは、
「おうたえほん!」
僕の手には大きなマイクが出現する。
ねぇちゃんがよくこれを読み聞かせてくれたっけな。
っと、感傷に浸ってる場合じゃない。
僕はマイクを片手にグラウンドに響くような声で、雨をかき消すような声で叫んだ。
「みなさん聞いてください!!今日の翔子と麗花の色は……」
ものすごい勢いでこっち目掛けてかけてくる人影が2つ。
おお、予想通りの反応。
あの2人が本物の翔子と麗花だな?
「杏ちゃん!!!大勢の前で何口走ろうとしてるのよ!!」
「杏介、あなたって人は!!!」
ゴン!
ゴン!
ものすごい勢いでこちらにきた2人にものすごい勢いで殴られた。
痛い。
「ちょ、ちょっと待ってよ。痛いじゃんか。なんで殴るのさ!?」
「もーほんと杏ちゃんってデリカシーがない!いくら雨で透けてるからってそんなマイク持って叫ぶことないじゃない!」
「……最低」
「何を言ってるんだ?翔子と麗花の傘の色を言おうとしただけなのに」
「「へ?」」
「重松さんは僕に3人目と言った。今グラウンドにいる受験者の中で僕が気づくより先にユーザーのことについて気づけるのは翔子と麗花かなって思って。一次試験のことは全部知られていても試験会場にくるときの傘の色なんて重松さんは知らないだろ?それで2人を判別しようと思ったんだ」
「ま、紛らわしいことしないでよね!」
「……最低」
ゴン!
ゴン!
痛い。
また2人に殴られた。
なんでだよ。
「ま、私は幼馴染だから?目の前にいる杏ちゃんが本物だってわかるけど?私たちと合流してどーするの?」
「重松さんは一次試験を監視して受験者の教科の力を知った。そして知っている教科の力しかアカウントは使うことができない。これは聞いた?」
「そこまでは知らなかったわ。私は偽物が教科の力を使わないのがわかったから教科を使っている本物の杏ちゃん達を探してただけ」
「私も似たような感じよ」
幼馴染関係ねーじゃねーか。
教科の力を頼りに探してるじゃん。
まあ、なるほど。
やっぱり僕より先に気づいていたのはこの2人か。
「そしたら重松さんが、その考えは間違ってるって伝えにきたの。確か、気づきを与えるのも教員の仕事だとかなんとか」
「私も似たような感じよ」
「僕はそのあとさらに重松さんに質問したからね」
ちょっと誇らしげに言った。
「そんなことするの杏ちゃんだけよ。テストで監督の先生に「この問題のヒントください」って言っているようなものだわ」
……た、たしかに。
ぐうの音も出なかった。
「で、でもそれで情報を得たのは事実さ。それで、2人に協力して欲しいことがあるんだ」
「はいはい、わかりました。それで?」
「一次試験で使った力は対策されている可能性が高い。何せ教会主任だ。それくらいしていてもおかしくない。だから重松さんが知らない技でこの状況を打破するのさ。麗花、一次試験ではどんな力を使った?」
「blizzardとicicleしか使ってないわ」
「よし、それなら大丈夫だ!」
「大丈夫って、杏ちゃんどーするの?」
「今からアカウントを一網打尽にするのさ」
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