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052.偽物とSNS

 僕たちは重松さんを追ってグラウンドに来ていた。

「もう、傘さしてないから制服がびしょびしょ!下着透けちゃうじゃない!最悪!」

「今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ?大体翔子のなんて誰も見ない…」

「もー!!」

ゴンッ!

「おごっ…!?」

翔子の容赦ないグーパンチが僕に炸裂する。

「今のは杏介が悪いわ」

「そうよそうよ!女の子の敵よ!それよりも重松さんを探さないと」

事実を言ったまでじゃないか!

僕にそんな邪な考えなんてほんの少ししかないぞ!


「あの試験官いないぞ?どこに行ったっしょ?」

おかしいな。

確かに重松さんはこっちの方に走って行ったはず。

「おい快斗。あっち側を探してみよ……」


ゴンッ!!!


鈍い音が後頭部から響き、吹っ飛ぶ。

え?

何が起きた!?

ベチョっと雨の染み込んだグラウンドに突っ伏しながら、攻撃の主を見る。

快斗だ。

は?

一体どういう……。


「風速10m!」

もう1人の快斗が僕を殴った快斗を吹き飛ばす。

「偽物に騙されるんじゃないっしょ!杏介!」

「に、偽物?」

「ああ、周りを見てみろ!」

その言葉にしたがって周りを見ると、


「なん……だよこれ?」


30人くらいしかいなかったはずのグラウンドには大勢の人で溢れかえっている。

1000人はいるんじゃないか?

しかも、

「おい、快斗。どういう状況だよ!同じ顔のやつが何人もいるぞ!?」

「俺の顔のやつも杏介の顔のやつもいるっしょ!ぐっ……!?」

「快斗!?おい快斗!?」

くそ、本物らしき快斗は人に紛れて見えなくなる。

落ち着け。

こういう時は落ち着いて状況を整理するんだ。

重松さんをグラウンドに出た途端、僕たちのコピーがたくさん現れた。

つまりこれは重松さんの異能ってことか?


ゴンッ!!!


「ってーな!」

今度はちゃんと受け身を取ることができた。

すでに服は泥でぐしょぐしょなのであまり意味はないが。

「木を隠すなら森の中。人を隠すなら人混みの中だよ。泉」

「これは重松さんの異能ですか?」

「そう、「拡張SNS」だ。SNSは匿名でなんでもやりとりができる。今回はグラウンドを一つのSNSに、参加者をユーザーに見立ててみた。無論、偽ユーザーもたくさん紛れ込ませているがね」

ふむ。

つまりは受験者のなりすましアカウントならぬ、なりすまし人間が僕たちを攻撃しているってことか。

非常に厄介だわ。

どれが本物の受験者かわからないし、4人とも逸れてしまった。

そして何よりまずいのが、重松さんを探さないといけないということだ。


「さあ受験者の諸君!一体どれが私かわかるかな!?時間内にこのグラウンドで本物を見つけ、なおかつ栞を撮って見せたまえ!」

くっ……雨で視界がはっきりしない。

さっきみたいに「てぶくろをかいに」で天候を変えてもこの大雨だ。

土砂降りの天候を上書きし、グラウンド全体を雪に変えるのは僕の力では無理だ。

というか相当な教科の力がないと誰にでも無理だろう。

!!

なるほど、だから重松さんはグラウンドに出たんだ。

この天候を利用するために。


「ですが重松さん、今僕と喋っているあなたが本物でしょう?僕の目の前にいるというチャンスを僕が逃すわけがないでしょう。水の東西!」


バシャン!とてから噴水を飛ばし、目の前の人物を吹き飛ばす。

……あまりにもあっけない。


「SNSは匿名で何個もアカウントを作れるんだよ」

後ろからの声に反応し、咄嗟にかがむ。

二谷の顔をした人物の拳が空を切る。

……ですよねぇ、やっぱり重松さんはグラウンドにいる偽物と自由に場所を入れ替えることができるんだ。

そして容姿を変えられるんだ。

まるでSNSでユーザーを切り替えるように。

まるでSNSのアイコンを作成するかのように。

残り時間は後20分……。

これ結構きついんじゃないか?

僕は心の中で舌を打ちながら雨の中を走った。

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