050.二次試験と木屑
50話目。雨やら嵐やら雪やら天候が巡るめく変わりますね。
某守護者みたいです。
雨の音が響いている。
さっきまで別空間にいたせいか雨の音が小気味いい。
雨は嫌いじゃなかった。
「それじゃあ、そろそろ二次試験といこうか。そうだな、30分ってとこか」
「30分?なんの時間のことっしょ!?」
「ん?3時のおやつの時間までさ。それが君たちに残された制限時間だ」
せっかく快斗が質問してくれたのに意味がわからない。
技術屋とか芸術家って結構独創的な考えの人が多いなと思うのは僕の気のせいだろうか。
「俺、もしくは小室先生から栞を奪え。15時になって栞を持っているものが二次試験合格だ」
「おい、私は様子を見にきただけだぞ。勝手に巻き込むな」
「まあまあ小室先生、そう言わずに、はい、俺特製の栞を渡しますから」
「ふん、まあいい、ちょっとは楽しめそうだ」
「フィールドはこの高校全体。栞の数には限りがあるから、頑張るように。もちろん、俺と小室先生は奪われないように全力で栞を死守する」
「で、どーやって奪うんっしょ?」
「力ずくでに決まっているだろう?」
重松さんがニヤリと笑った。
「木屑嵐!」
重松さんの声で大量の木屑が体育館に舞う。
体育館の壁面にガシュガシュと音を立てて木屑がめり込む。
おいおい、いや、舞うどころかこれ、切れるぞ!?
「羅生門!」
僕は防壁を作る。
ガシュガシュ
まじかよ、あの木屑一つ一つが僕の作った門より強いっていうのかよ。
さすが技術主任……。
僕だけでなく、受験者はそれぞれの教科の力を使って身を守るのに必死だった。
そんな中、
「点P」
一際大きい声が響いた。
二谷だ!
重松さんのもつ栞の一枚が、まるで二谷に引き寄せられるかのように動く。
「っと!?」
この動き、どこかで見たことある。
それも嫌な思い出だ。
数学のテストだ!
あいつ、中学生が嫌いなものランキング(僕調べ)トップ10は確実であろう「動く点P」を使いこなしてるんだ。
栞は高速で動き、二谷の手中におさまる。
「これで僕は二次試験合格ですよね?」
「……ああ、おめでとう、俺はとられた栞を奪い返すことはしない。俺はな」
「!?」
吹き荒れる木屑の中、二谷だけではなく全員の動きが止まる。
いや、止まるというより、動けない。
この技は……。
「キラキラ光る 夜空の星よ まばたきしては みんなをみてる」
ちくしょう、満点の星空に木屑の嵐とかどんな状況なんだよ!?
「私は取られたものは取り返すぞ」
いや、取られたのは重松さんで小室先生は取られてないじゃん。
違う、そうじゃない。
小室先生は自分からも攻撃を仕掛けるぞってことが言いたいんだ。
だんだん小室先生の大雑把さがわかるようになってきた。
この状況を打破するには……。
「麗花!力を貸してくれ!」
「…………」
返事はない。
だが彼女は絶対力を貸してくれるはず。
「てぶくろをかいに」
「……そっちなのね。じゃあ私が合わせるわ」
小さな声でそう聞こえた。
「powder snow」
星空のもとの嵐はやみ、一面の銀世界が広がった。
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