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004.教会と異教

町外れの森の中、男は語りかけるように喋り出す。

「3件目で釣れるとはね、もう出てきてもいいのではないですか?尾行してるのはわかっていますから」

素直に顔を出す。

「その口ぶりからして、放火魔ってことでいいんでしょう?」

「その通りです。異教「理科」主任、明石当麻と申します。もっとも今から死にゆくあなたにはいらない情報でしょうけどね」

男が喋り終わるのと、自分に何か液体が巻かれたのに気付くのは同時だった。


「…っつ!?」

この匂いは…ガソリン!?いや、アルコールか!

咄嗟に距離を取り、

「雨など降るも、をかし!」

そう称えると、当たりには小雨がふり始めた。


「ほう、いい判断です。体からアルコールを流し、私が使うであろう炎の威力を弱める一石二鳥の作戦。素晴らしい」


 異教…思考を巡らす。現在この日本で最も大きな犯罪組織の名前だ。

主任ということは…リーダー格?

「理科」主任ということは別にも主任が存在する?

情報を整理しつつ慎重に言葉を選ぶ。

「別に褒めて欲しいわけじゃないわ。あなたの目的は何?」

「目的?目的なら今果たされましたよ。」

「!?」

「教会のものを炙り出す。これが私の目的です。私を尾行する行動、咄嗟の判断力、どれも悪人を追う異能集団「教会」の行動としか考えられません。あなた…教会所属の方でしょう?」



「ねぇちゃん、それほんと!?」

「嘘…お姉さんが教会のメンバー…?」

駆けつけた2人は驚きを隠せない。

「杏介!?それに翔子ちゃんまで…」

教会とは警察では手に負えない異能の犯罪を取り締まる警察の上位互換のような組織だった。

まさかねぇちゃんがそのメンバーだとは思わなかったが…。

昨日のねぇちゃんの教科や行動、私して何より、目の前の光景が真実を語っていた。


「その通りよ。黙っててごめんね杏介。でも大切な弟を危険にはまきこめないわ。」

まただ、またあの時みたいに…僕を危険から遠ざける。


「…さて、私は教会「国語」所属、泉!明石、あなたを止めるわ」

「できるのもならどうぞ。私はあなたを連れ帰りますがね」


「アルコールランプ」

明石がそう口にすると両手に炎が灯る。

「無駄よ、白き灰ガチになりて、わろしっ!」

ねぇちゃんが昨日の戦いで見せた異能だ。

一瞬炎が消える…がまたすぐに明石の手に炎が灯る。


「国語は小説の力。空想の産物。温度や湿度など決まった数量を持たない。逆に理科や数学は決まった数字がある。私の手にはエタノール、363℃を維持し続ければ炎が消えることはありません」

「私の言葉の力がそれを上回ればいいだけの話でしょっ!」

叫ぶと同時に、みずきは走り出す。

「霜のいと白きも!」

つららが中を舞い、姉ちゃんの両手にもつららが装備される。


「これは面白い!氷で炎と対峙するなど、到底理解できませんね」

「国語を馬鹿にしてるあなたにはわからないでしょうね」


杏介は、ただ2人の攻防を見ているだけだった。

いや、見ていることしかできなかった。

あまりにレベルの違いすぎる光景にただただ立ち尽くすしかなかった。


「先日炎使いを倒したくらいで調子に乗ってはいけませんよ」

「あの男もまさか!?」

「想像通り、異教徒ですよ。ただし、私の部下ですがねっ!」

炎とつららが激しく交錯する。一定の温度を保ち続ける明石の炎とねぇちゃんのつららではねぇちゃんの方が不利に見えたが、つららは溶けても畳みかけるように数を増す。

数量では圧倒的にねぇちゃんの方が有利に見えた。


しばしの交錯のあと、不意に、本当に不意にねぇちゃんの動きが止まる。

「え…なん…で?」

僕は疑問を隠せず言葉に出したが、答えは匂いが教えてくれた。


「そこの坊や、この方の動きは賢明、実に賢明ですよ」

「たった今、エタノールをここら一帯に散布し終えました。あなたの雨も止み、私の合図でいつでもここは業火に包まれる。それに気づいて手を止めるとは実に賢明です」


「…あんたは絶対に許さないわ」

「ええ結構、連れて帰り教会の情報を聞き出したかったのですが、こうなっては仕方ありませんね」

「やめっ…!」

「エタノール発火!」


凄まじい轟音と共に、昨日とは比にならないくらいの熱波が当たりを包む。

息が苦しい。

僕は死を覚悟して目を瞑る。暗い。暗い。怖い。不思議と熱くはなかった。

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