046.爆音波とトランポリン
ゲームは好きです。
雨の音はしない。
完全に隔離された空間ということだ。
僕は宮坂の猛攻を躱し続けていた。
距離を取れば歯車が、間合いを詰めればチェーンソーが迫り来る。
羅生門がぶった斬られたところから見ても火力は宮坂の方が上だ。
「歯車、歯車、歯車」
「くっそっ……」
プシュッ、プシュッと僕の足を歯車が掠める。
致命傷は避けられているがやられるのは時間の問題だ。
それなら……。
僕は翔子と一ノ瀬さんの方を目掛けて走り出した。
「ふん、なるほど。だがそんなことでは俺は攻撃を止めん。歯車!」
うっそだろ!?
宮坂の味方である翔子の方へ逃げれば攻撃の手が止むかと思ったのに。
あいつそんなの関係なく攻撃してきやがる。
「爆音波!」
ボンっと歯車自体が吹っ飛ぶ。
「ちょっと泉!タイマンでやるって言ったやろ!男なんだからそっちの相手ぐらい自分でなんとかしてや!」
「いやぁ、まさか味方ごと攻撃してくるとは思いませんでしたので」
「言い訳は見苦しいで。フィールドが狭いんやからお互い邪魔にならんように戦おうや。次は泉ごとぶっ飛ばすで」
「肝に銘じておきます」
っていうか爆音波ってポケモンの技じゃ……。
一ノ瀬さんゲーム好きなのかな。
ぶっ飛ばされるのは嫌なので僕は二人から距離をとる。
「……あんたなかなかしぶといなぁ!せやけど防いでばっかりじゃうちには勝てへんで」
「勝ち負けとかではありませんので」
「他に何か狙いがあるんやな?さっきから全力を出す様子もなさそうやし」
「私は待ってるんです」
「待ってる?何をや?」
「杏ちゃんを」
「杏ちゃんって泉のことか?あんたルール把握しとるんか?あんたと泉は敵なんやで」
「わかっています。でも私は待ってるんです」
「私と杏ちゃんがこの試験を合格する方法を思いつくのを」
「そ、そんな方法あらへん」
「私は杏ちゃんを信じてますから。思いつくまであなたを惹きつけるのが私の役目です」
「うちはいつが試験に合格すればええからな。あんたに向かって全力で攻撃するで。死なへんように気をつけや!「バスクラリネット」!」
ズゥゥゥンと一際大きい重低音が響いて翔子が吹っ飛ぶ。
「翔子!」
「君、ルール把握してるの?翔子ちゃんは君の敵だよね?」
「幼馴染なんでね。心配しちゃ悪いですか?」
「トランポリン」
翔子がそう叫ぶと、壁に縦にトランポリンが出現し、壁との衝突を避ける。
「君はこっちに集中しなよ、歯車!」
……吹っ飛ぶ……壁、……歯車……爆音波……。
!!
これだ!
思いついたぞ!
この状況を一変する方法を!
ガガガガガ
「がはっ……」
いってぇ。
「別のことに気を取られて回避が間に合わなかったんだね。ここまでだ」
痛い。
歯車自体に刃物をついてないのに回転する歯車に当たるとこんなに痛いのかよ。
だけど、
「翔子!!」
「……待ってたよ!杏ちゃん!!トランポリン!」
ボヨーンとトランポリンを使ってこっちに翔子が来る。
「きょ、杏ちゃん結構血だらけだけど大丈夫!?」
「あんまり大丈夫ではないかな。カッコ悪い」
「泉!裏切るんかいな!?」
「翔子ちゃん、一体何を」
「まぁまぁ、抑えて、ここらで一時休戦しません?思いついちゃったんです僕」
「あんた何を!?」
憤る一ノ瀬さんを横目に僕はシニカルにこう言った。
「このゲームの必勝法ってやつをね」
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