043.おさげと動揺
僕は目を開ける。
体育館に響いていた雨の音はもうしない。
見渡すと6畳くらいの白いスペースにワープしたようだ。
もう一人の相方と共に。
その子の身長は150cmくらいだろうか。
二つ結びのおさげだ。
結構幼く見える。
僕はちょっときどってこう言った。
「僕は泉、君の名前を教えてくれるかな?」
「うちは一ノ瀬。一ノ瀬琴音や。よろしゅうな」
おお、関西弁。
リアル関西弁を使う人との初めての会話だった。
方言はアクセサリーという名言もあるので方言は結構好きだった。
「あんた制服着てるとこ見ると学生やね。何年生?」
「1年生だよ、そういう君は何年生なんだい?」
「3年生や」
しょ、小学3年生!?
それにしてはいたるところが育ち過ぎのような……。
ジロジロ見ていると怪訝な顔をされた。
「何勘違いしてるん?うちは大学3年生や」
「ウィッス、先輩、失礼しました」
変わり身のはやさには自信があった。
「よしよし、わかればええんや。さて、この空間から出るには誰か倒せばええんやったよね?」
「そ、そうですね、あそこに扉がありますし、とりあえず進んでみます?」
「そうしよか」
と、話もまとまり進もうとしたところでアナウンスが入る。
「みんな聴こえているな。受験者全員を空間移動し終えた。君たちは6畳ほどの部屋に二人であるはずだ。自己紹介でもしておきたまえ。ペアなのだから」
ゲームマスターっぽい重松さんの声だった。
「そんなんもうしてもうたで」
うん、この人もかなりせっかちそうだ。
「では、目の前の扉に開けて進むんだ。小さな体育館くらいの広さの場所に出ることができる。そこに対戦相手がくるはずだ。相手を気絶させればゲームクリア。自動的に集まった体育館へ戻れる仕組みになっている」
相手を気絶……か。
参ったとかそういう降参系はできないってことね。
「この空間では致死量のダメージを受けても死なない設定にしてある。君たちに人殺しをさせるわけにはいかないからね。安心して戦ってくれたまえ」
「泉……やったっけ?ルールは理解できた?」
「はい、なんとか」
「お互いの教科確認しとこか、うちは音楽」
「僕は国語です」
「了解、まあ下手なコンビネーションするよりタイマンで戦った方がええやろ。泉はうちが相手してない方を頼むわ」
「わかりました」
「にしても重松って人は技術なんやな。ゲームっぽいから情報かと思っとったけど」
確かにその通りだ。
技術主任なので他にもいろいろな力を使えるんだろうなと素直に思った。
「ほないくで」
「はい」
僕たちは扉を開け、進んだ。
先ほどの説明の通り、体育館のような場所に出る。バスケットボールのオールコートくらいの広さだ。
「なんや、まだ相手のペアはきとらんのんか」
「そうみたいですね、もうちょっと待ちましょう」
「だいぶ緊張しとるね?安心し、うちが二人とも倒してまうから。大船に乗った気でおりや」
タイマンで二人倒してくれるのか。
なんとも心強い。
この人が敵じゃなくてよかった。
そんなやりとりをしていると、扉が出現し、誰かがこの空間へ入ってくる。
なるほど、対戦相手も本当にランダムなんだ。
開かれた扉からは、男と女が出てきた。
が、その瞬間、僕は動揺してしまう。
相手も同じように動揺しているようだった。
「きょ、杏ちゃん!?」
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