041.カードと測定値
試験の後って疲れますよね。僕だけ?
「いや、遠慮しておこう」
重松さんはそう答えた。
「君、名前は?」
「泉といいます」
「泉?どこかで聞いた名前だな……」
僕はちょっとムッとした。
ねぇちゃんは同じ教会のメンバーなのに名前を覚えていないとは。
まあ教科が違うから覚えてないのかと僕は一人で納得した。
「泉、これを渡そう」
「これは?」
小さなカードのようなものを渡された。
「一次試験を受ける資格だよ。明日同じ時間にこの場所に来てそれを提示すると中に入れる」
なるほど。
「さあ、出口から出たまえ。何しろ測定しないといけないものがたくさんいるからな。明日、待っている」
僕は言われるがままに外に出た。
出ると、翔子も麗花も待ってくれていた。
「杏ちゃん!どーだった?」
僕はちょっと誇らしげに、さっきもらったカードを見せた。
「やったね、杏ちゃんも一次試験受けれるね!」
「もってことは翔子も?」
「もちろん、それに絢辻ちゃんも」
二人ともカードを手にしていた。
ちょっと安心。
「二人とも測定値はいくつだったんだ?」
「私は158」
「私は163」
前者が翔子で後者が麗花。
僕は135。
二人とも僕より高いじゃねーか。
「杏ちゃんはいくつだったの?」
「160かな」
「なんでそんなバレバレの嘘つくの?杏ちゃんのよくないところ」
バレバレだった。
なんで嘘が一瞬でバレるんだよ。
幼馴染こえーよ。
「ま、まあ3人揃って一次試験受けられるんだからいいじゃねーか」
「そうよ杏ちゃん、測定値なんて気にすることないわ」
「そうよ杏介、気にすることないわ」
二人揃って励ましてくれた。
逆に僕のあってないようなプライドは打ち砕かれた。
「さ、電車に乗って帰りましょ、明日からが本番よ」
「そ、そうだな」
まだ小雨は降り続いていた。
電車に揺られていると、
「ね、杏ちゃん、一次試験ってどんな感じだと思う?」
「どんな感じって?」
「ほら、走る試験官について行ったりとか料理したりとか色々あるじゃない?」
「漫画の読みすぎだ」
やっぱりみんな読んでるよな。
ちなみに僕も好き。
「あれなんじゃない?やっぱり異教と戦ったりするから、模擬戦とか?」
「一対一かなぁ、チーム戦とかだと杏ちゃんと戦ったりするのかな?」
それは考えたこともなかった。
翔子と戦う可能性だってあるのか。
うーむ。
翔子に喧嘩で勝ったことは一度もない。
口喧嘩だが。
「それはその時になってから考えたらいいんじゃない?戦うって決まったわけじゃないし」
「それもそうね。私絢辻ちゃんとも戦うの嫌なんだけど」
「……私は嫌じゃないわ」
さすが麗花。
いつもにましてクールだった。
電車が駅につき、改札を出る。
「それじゃ私こっちだから」
「おう、麗花も気をつけて帰れよ」
「じゃあね絢辻ちゃん」
小さく手を振って麗花が去っていく。
「さ、杏ちゃん、私たちも帰りましょ」
「いえっさー」
家に着くと、どっと疲れた気がする。
やっぱ試験って緊張するよなぁ。
明日大丈夫かなと少しだけ不安になるが、乗りかかった船だ。
気にしても仕方がない。
小雨は勢いを増している。
明日には本降りになりそうだな。
そんなことを考えながら僕は眠りについた。
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