003.放火魔とポーカーフェイス
「放火魔?」
「杏ちゃん知らないの昨日の夜と今日の朝!大ニュースだよ!」
翔子がお昼休みに話しかけてくる。
「ボマーなら触られなければ大丈夫っしょ!」
快斗が会話にわって入ってくる。
どうやらこの学校は漫画好きが多いようだ。
にしても放火魔…か。
昨日学校を襲ってきたのも炎を使ってたな…偶然か?
「私が聞いた話では襲われる家には共通点があるんだって!」
「共通点?」
「赤兎馬っしょ?」
小学生名探偵か。
「共通点って何だよ?」
僕が聞くと、翔子はなぜか得意げにこう言い放った。
「うちの学校の生徒の家ってことだよ」
何てこった。入学初日に襲撃を受け、2日目にして放火魔。
この学校は呪われてるのか?
「だーかーらー!杏ちゃんが襲われないように今日は私も一緒に帰ります!」
「いや、いっつも一緒に帰ってるじゃん、方向一緒だし」
「面白そうじゃん!俺も一緒に行くっしょ!」
まずい、また流されている。
いやと言えないのは僕の悪いことろだと自覚してる。
「杏ちゃん警備隊結成だね!」
「おう、結成っしょ!」
いつから僕は守られるお姫様になったんだ。
まあ危険が少なくなるのは間違いなかった。
授業が終わり、HRでねぇちゃんも
「火には十分に気をつけるように!と言ってもガスの元栓の切り忘れとか電気の切り忘れとかしか気をつけられないけど」
「じゃ、今日はおしまい!また明日ね!さようなら」
「ねぇちゃんねぇちゃん」
「ん、何かな?それと学校では先生と呼んでよね」
「それは置いといて、火には気をつけるようにって放火のことだよね?」
ねぇちゃんはちょっと驚いた表情を浮かべながらも
「心配することないよ、私が何とかするから」
私が何とかする?警察じゃなくて?
僕が思考を巡らせていると
「さ、早く帰りなさい!」
ねぇちゃんに急かすように帰されてしまった。
結局、杏ちゃん警備隊とやらが活躍することはなかった。
よくよく考えれば放火なんだから下校中は襲わないのでは?
なんて考えて宿題を解きながらウトウトしていると、何か音が聞こえる。
この音は…サイレン!?
僕の思考が消防車のサイレンと放火魔を結びつけるのに時間はかからなかった。
音はかなり近い。
もしかして…翔子?
僕はシャーペンを放り投げ外に出た。翔子の家は走って2分もかからない。
…違う。翔子の家じゃない。
ホッと息をついていると、後ろから、
「杏ちゃん?」
と呼びかけられる。
ふむ、翔子もサイレンが聞こえて家を出てきたってわけだ。
考えることは同じだった。
「よかったー!杏ちゃんの家なんじゃないかって心配してたんだよ」
「それはこっちのセリフ」
「「それはこっちのセリフ」じゃないでしょ!?」
今度は駆けつけてきたねぇちゃんの台詞だ。
「一言ぐらい言ってから出てよね、もう」
と、口を膨らませながらぷんぷんしている。
子供みたいだ。
「さ、帰るよ!」
と、家に向かって歩こうとしたその時、急にその表情が険しくなる。
「…ガソリンの…匂い?」
「え?」
「悪い、ねぇちゃん急用できたから先帰ってて!」
「え、ちょっと!?」
言うや否やねぇちゃんは走っていく。
僕はこの表情を知っていた。
というか、この展開を知っていた。
前にも似たようなことがあって、結局ねぇちゃんは怪我をして帰ってきた。
あれは隠し事をしている顔だ。
「行くんでしょ?お姉さんのところに」
「やっぱりバレてる?僕ってそんな表情に出てる?」
ポーかフェイスには結構自信があったんだけどなぁ。
「私はわかるの。何たって杏ちゃんの幼馴染だからね!」
というわけで2人でねぇちゃんを追うことにした。
正確には放火魔を追うことにした。
ねぇちゃんはガソリンの匂いと言っていたからおそらく放火魔と関連づけて怪しい人を見つけたんだ。
それでその人を追っているに違いない。
今度は…今度は僕がねぇちゃんを守るんだ。
そういきまいてねぇちゃんがかけて行った方向へと走り出した。
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