038.締めの挨拶と強さ
14時5分前。
全員が整列して、小室先生や毛利先生など一年団の先生と綾香さんが前に立っている。
いわゆる締めの挨拶だ。
「みなさん、強くなれましたか?「強さ」には種類がたくさんあります。自分で生きる強さ。誰かを守る強さ。色々な強さを身につけ、大人になっていってください。困った時はまたいつでもここにきてくださいね。影ながら助力させていただきます」
さすがは綾香さん。
言うことが大人だなあ。
「強くあれ」
これは小室先生の挨拶。
だから大雑把なんだって。
ピンポイントに事実をついた一言ではあるけども。
「バスライド。それではバスに乗ってください」
毛利先生がみんなをバスへ誘導する。
行きと帰りのバスの座席は同じ。
なんとなく外を見ると、綾香さんと目があい、ウインクされる。
美魔女かよ。
麗花のねぇちゃんでも通用するような見た目と仕草だった。
帰りのバスはあっという間だった。
というかほぼ寝ていたからなんだけど。
「バスから降りたら各自解散」
えぇ、学校ついてから点呼とかねーの?
まあ乗る時に確認してるんだから問題ないとは思うけど。
さすがは小室先生だった。
「杏ちゃん!一緒かえろ!」
「ん、翔子か、オッケー。帰り道病院寄ってもいいか?」
「もちろん、お姉さんに報告するんでしょ?仲良しの女の子ができたって」
「なんでそうなるんだよ。ふつーにお見舞いだよ」
翔子はジト目だった。
「告白とかされてないでしょうね?」
「サレテナイサレテナイ」
わざと棒読みで答える。
「えー!?なんでそんな棒読み!?やっぱり絢辻ちゃん……侮れない」
「やっぱりってなんだよ、ほんとに何もないよ」
「もー。思わせぶりな態度とるの、杏ちゃんのよくないところ」
病院につき、ねぇちゃんのいる個室へ向かう。
やっぱりねぇちゃんは目を覚さない。
でも生きてくれているだけで大丈夫。
いつかはあの頃みたいに元気になる。
いつもそう自分に言い聞かせている。
「大丈夫だよ。お姉さんは目を覚ますよ」
見透かしたように翔子がさとす。
「……幼馴染こえーよ」
と、顔をあげると、何か花瓶の横に置いてあることに気がつく。
「どしたの杏ちゃん?」
「いや、花瓶の横に何かあるなって」
これは、
「シャーペン?」
「多分?誰かが忘れていったのかな、それかお見舞いの品物か」
銀色のシャープペンシルだった。
おそらく前者かな、お見舞いでシャーペン持って来る人なんてほぼいないだろう。
僕はそのままシャーペンを置いておいた。
看護師さんの忘れ物かもしれないし。
「よし、帰るか」
「うん」
教会試験まで後1ヶ月くらい。
僕はどこまで力を伸ばせるだろうか。
少しでもねぇちゃんに近づけるだろうか。
そんなことを思いながら僕は病室を後にした。
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