036.合宿二日目と勘
男子高校生の朝は遅い。
とはいえ、合宿や宿泊研修に限っては例外だった。
一番早起きは僕。
二番目は二谷、最後は快斗だった。
快斗は起きるのは苦手なのか。
せっかちにしては珍しい。
朝食を手短に済ませ、集合時間である8時に間に合うように支度を整える。
ちなみに朝食は綾香さん特性のおにぎり。
超美味かった。
8時ギリギリに集合場所である宿舎入り口の開けた場所に行くと、僕たちが最後だった。
みんな5分前行動を徹底している。
ここらへん、小室先生の教育の賜物なのだろうか。
「よし、全員揃ったな。昨日は満点の星空だったが、良く眠れたか?」
ん?なんで小室先生が満点の星空だって知ってるんだ?
何か引っかかったが、深くは考えないようにした。
「14時に網代山を出発する。それまで存分に教科の力を鍛えるように。以上」
だから大雑把すぎるって。
具体的な指示はねーのかよ。
「やることがわからないものはもう一度山頂を目指すといい。影を配置するよう頼んでいるからいい鍛錬になるだろう」
おお、さすが教師、準備は万端ってわけね。
さて、僕は今日は何をしようか。
昨日と同じ場所にいってまた色々試そうかな。
そんなことを考えていると、後ろから袖を引っ張られる。
この袖の引っ張られ方、もしや、
「麗花?」
「わ、振り向いていないのに良くわかったわね」
「勘だよ、勘」
袖の引っ張り方で見分けたことは黙っておこう。
「試したいことがあるの、昨日あなたが修行してた場所へ行きましょう」
「ちょ、ちょっと待ってよ、なんで麗花が昨日僕が修行してた場所知ってるんだよ?」
「……お、お母さんにきいたの」
なるほど、それなら知ってて当然か。
まさか僕を尾行していたなんてことはあるまい。
僕は麗花とともに昨日と同じ場所へ向かった。
山のちょうど真ん中らへん。
近くに川も流れていて、何より、僕が薙ぎ倒した木々の傷が新しい。
これを僕がやったと思うと流石にちょっと罪悪感があった。
「それで麗花、何を試すんだよ?」
「それはね、きょ、杏介…」
おお、ついに麗花が僕のことを名前で……。
感慨深かった。
「何かうわついたことを考えていないかしら?」
「い、いや考えてないよ。やっと名前でとか微塵もかけらもこれっぽっちも考えてないよ」
「……もう」
耳が真っ赤だった。
「それで麗花、何を試すんだよ?」
仕切り直し。
「それはね、合わせ技よ」
「合わせ技?」
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