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033.カレーと耳打ち

合宿といえばカレー。

 山を降りる時に幽霊、いや影に出くわすことはなかった。

結局小室先生から影に関して詳しい説明はなかった。

いい勉強になったろだけって、僕たちは影のこと何もわからないじゃないか。

まあ、小室先生が知ってて黙ってたってことは危険ではないということなのだろう。


 宿舎に戻ると、何かいい匂いがする。

これは……カレー?


「あ、杏ちゃんおかえり!カレーもう少しでできるよ」

「え僕の分も作ってくれてるのか!?」

「絢辻ちゃんのお母さんにはんごうセット借りたの、合宿といえばカレーでしょ?」

確かに合宿といえばカレーだが。


「なんか悪いな、よし、僕も手伝おう、『注文の多いりょ…」

「ちょ、ちょっと待って!それ私たちが食べられる方だから!」

意外と翔子は文学に詳しいようだった。

っていうかみんな知ってるか。


「杏ちゃんたちはそこで大人しく待ってて」

「はーい」

「へーい」

「分かったっしょ!」

僕と快斗と二谷がそれぞれ返事をする。


 ぼーっと料理をする翔子を見ていると、具材を持って麗花と麗花母が現れる。

「海崎さんこれで足りますか?」

「ありがとうございます。これだけ野菜があれば十分です」

え、普通野菜を煮込んでからルーをとくんじゃ…?

と不審に思い目を尖らせると、翔子に睨み返される。

「なーに杏ちゃん、私の作る料理に文句あるの?」

「ありません、微塵もありません」

だからなんで考えてることがわかるんだよ。

幼馴染こえーよ。


 そんなことをしていると、野菜を運び終えた麗花と麗花母がこちらへ向かってきた。

「みなさん、登山お疲れ様でした。御三方は、まあ、ほどほどに健闘されてましたね」

「なんでわかるっしょ!?」

「微妙なものいいですね」

前者は快斗、後者は二谷の感想。

僕の感想はというと、

「その口ぶりからして、影を操る、いや影を出現させていたのは絢辻さんなんですね」


「その通りよ、泉君、小室先生に頼まれてみなさんを鍛えようと思いまして」

やっぱり、僕は考察が当たっていたことに内心ガッツポーズをする。

「まあ、最初は私が山の中で修行していたせいで幽霊の噂がたったんですけどね」

麗花とは違い、笑いながら話してくれる。

なるほど、だから噂の幽霊は魔女みたいとか、近寄り難い見た目とか、クールとか雪女とかいわれてたわけね。

全部麗花のお母さんにも麗花にも当てはまる表現だった。


「きょう……泉君にはお母さんのことを教えようとしたんだけど、海崎さんが来ちゃったから」

ふむ、一歩前進はしたが、まだ名前呼びは遠いようだ。

それに影のことも別に翔子にも教えればいいだけなのに。


「あなたが泉君ね?最近麗花からよく話を聞くわ、よろしくね」

「ちょっと、お母さん!」

ちょっと、お母様、その話、もっと詳しく。

麗花の顔が珍しく赤く染まる。

いつもの凛々しい表情も美人だが、個人的には赤らめている表情の方が好きだ。


「もーなに騒いでるのよ、ほら、みんなカレーできたわよ、絢辻ちゃんも絢辻ちゃんのお母さんも食べませんか?」

「私はえんりょ……」

「まあ、ありがとう、もちろん喜んで食べさせてもらうわ、ね、麗花?」

言わずもがな前者は麗花、後者は麗花母。


 翔子が綺麗にみんなにカレーを盛り付けてくれる。

翔子の料理は昔っから手順はぐちゃぐちゃだが、味はなかなかに美味しいのだ。

「サンキュー海崎!」

「海崎さんありがとう」

それじゃ、みんなで、

「「いただきます」」

「……ます」

麗花だけ遅れて「ます」と聞こえたのが印象的だった。


「うまいっしょ!めっちゃうまいっしょ!」

とガツガツ食べる快斗。

そんな快斗には目もくれず、翔子がチラチラこちらを見てくる。

「美味しいよ、昔っから翔子の料理は好きなんだ」

そう言うと、翔子はホッと一息つき、

「よかったぁ」

と笑顔を浮かべる。

が、どこかぎこちない。

「なんか僕に言いたいことがあるんでしょ?」

「え」

「頂上でも何か言おうとしてたし、バレバレだよ」

「だ、だよねー」


 そう言うと、翔子がこそっと僕に耳打ちする。

「今日の夜、消灯時間の10分後にこの場所に来て」

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