026.洗濯機と迎え
小学校の頃、プールで洗濯機、楽しかったくないですか!?
杏介が影と遭遇したタイミングで、翔子もまた影と遭遇していた。
「杏ちゃん、杏ちゃん!?」
さっきまで一緒に歩いてた杏ちゃんがいない。
霧で前も見ずらいし、どうしよう。
焦って悩んでいると、目の前に半透明の黒いのようなものが現れる。
「へ……?これって……」
私は都市伝説とか噂とか大好きだけど、実際にそんな現場に居合わせたことはなかった。
「ゆ、幽霊!!!」
どどど、どうしよう。
めっちゃテンションが上がっている。
……いや、みんながいなくなったんだからまずはそっちを優先して考えないと。
「幽霊さん、みんながいなくなったのはあなたの仕業?」
もちろん幽霊は答えない。
半透明の黒い幽霊はみるみる姿をかえ、私そっくりの格好になった。
色は黒いが。
「やっぱり!幽霊って姿も変えられるのね!」
テンション爆上がりだった。
ヒュン、と幽霊から槍のようなものが飛んでくる。
これは……。
「……幽霊さん幽霊さん、それ「槍投げ」よね?いつ私と同じ技を使えるようになったのかしら?まだ私誰にもその技見せていないはずだけれど?」
幽霊は答えない。
ヒュン、とまた槍が飛んでくる。
私は好奇心を押さえて臨戦態勢に入った。
ある程度幽霊と戦ってみて分かったことは二つ。
一つは私とほぼ同じ能力を有していること。
「槍投げ」や「ハードル走」、「ストレート」なんかも使ってきた。
どうやら私の分身だけあってなかなか強いわ。
もう一つは敵意があるというより、私を捕まえようとしているということ。
その証拠に槍も急所を狙ってうってはいないし、幽霊が私の手に絡み付いてきたのが決定的だった。
みんなもこうやってどこかへ連れて行かれたのね。
!?
みんな……も!?
そうか分かったわ!
「水泳、洗濯機!」
私の周りに水が渦巻く。
幽霊とは水に流されるように距離ができる。
私は小室先生の言葉を思い出す。
「なるべく遅く山頂を目指すように」これは幽霊に捕まるなってことなんだわ。
きっと捕まると頂上に連れて行かれてしまうのよ。
翔子は勘が鋭かった。
だけど、幽霊の狙いが分かったところで、攻撃手段がない。
向こうの槍は実体化して私に飛んでくるのに、私が物理攻撃をしてもすり抜けちゃうんだもの。
幽霊だから当然なのだけれど。
そんなことを考えていると、
「アルコールランプ」
周りが炎で照らされる。
「!?」
明らかに幽霊から出た技じゃないわ。
「それは、影ですよ。したがって影ができない条件を作れば影は消える。それに、炎に影はできませんから」
「……っ。あなた、いや、お前は!」
「改めまして、異教理科主任、明石当麻と申します。海崎さん、あなたをお迎えにあがりました。」
私は勘が鋭い方だ。
だから分かっていた。
この男が何を言いたいのか。
だけど、聞かずにはいられなかった。
「迎え?どういう意味よ?」
「なに、簡単なことです。先日の「見せ合い」を見ましてね」
「……それで?」
「あなたを「異教」にスカウトしに参りました」
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