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001.選択とせっかち

 男子高校生の朝は遅い。

基本ギリギリに起きてギリギリに家を出て、ギリギリに登校する。

僕も例外ではなかった。


 教室に入ると、

「ギリギリセーフにしといてあげる」

ねぇ…いや担任の泉先生がニコニコしている。

このニコニコは怒ってるな…朝起こしてくれればいいのに…

内心ではそう思っても言葉には出さない。

「…気をつけます」

「うん、それでよろしい!今日は一限から「教科」の時間だからね!張り切っていこう」


 「教科」の時間は毎日一時間。

国語や数学とは別にあって、自分の「異能」を鍛えられる。


 今、目の前に立っているのは一年生の学年主任の小室先生だ。

場所はグラウンド。…なんで音楽の先生なのにグラウンド?

「まずは自分の特性を見極めること!「好きなこと」だけでは足りない。「得意なこと」「自分に向いているか」など自分に合っていれば合っているほど力は強く、大きくなる」

「例えば、私の教科は「音楽」だ。聞いてくれ」


 すると、何か音が流れ込んでくる。これは…

「キラキラ星?」

翔子が問うと、

「その通り。ほら空を見て?」

小室先生の声でクラス全員が空を見ると、

「キラキラ光る、夜空の星よ」

フレーズとともに空が暗くなり、満点の星空が目の前に広がる。

「……こ…れが、教科の力……」


「そうだ。思い入れが強ければ強いほど力を発揮する。だから私がチューリップの花を歌ってもここまでの光景は具現化できない。せいぜい一輪の花が咲く程度だろう」

「さあ、君たちは何を思う?何に興味を持ち、何に心を惹かれる?何を好きで、何が自分にとって大切だ?」


 僕は…


「決まった者からこのノートに名前と教科を書くんだ。質問がある者はいるか?」


 いや、質問だらけだ。説明が少なすぎる。

どうやら小室先生は大雑把な性格らしかった。


「はいはいはい、質問質問!そのノートはなんですか?書き直せるんですか?シャーペンで書いてもいいんですか?本名ですか?決まってない人はどうすればいいですか?」

質問者はせっかちな性格らしかった。


 高校生活二日目、僕の記憶力では顔と名前が一致しなかった。


「質問は名乗ってからするように」

小室先生も一致しないようだ。


「菅原快斗っす」

「よろしい、菅原、質問に答えよう。このノートは「きょうかいのうと」という。国から高校に配られる。珍しいものではない。どこの高校にも支給されるからな。」


「それに書けば「異能」が使えるんすか?」

「ああ使える。書き直しはできない。よく異世界もののアニメである誓約とか契約とかそんなものをイメージしてくれればいい」

小室先生はアニメ好きらしかった。


「OK!じゃあ一番いっきまーす」

質問を聞ききっていないにも関わらず菅原は小室先生へ駆ける。

本当にせっかちな奴だ。


 さて、僕は何にしようか。

誓約とか契約とか言われちゃうとかえって重いイメージだ。


「おぉ、すげーーー」

このクラスのせっかち代表は早速「教科」を使っている。

クラスのみんなが菅原を見る。

見る…が早すぎて見えない。

「体育」で速度を上げているのか…「理科」の風を使っているなんてのも考えられるな…


 それを見たクラスメイトが次々と教科を書き込む。

うーーむ…


「まだ迷ってるの?」

翔子が顔を覗かせる。

「迷ってるふりしてるだけだよね?そーやって人の目を気にするの杏ちゃんのよくないところ!」

…図星だった。相変わらず幼馴染は恐ろしい。


「あぁ、その通り。ねぇちゃんを見て育ってきたからな。教科は決まってるさ」

「やっぱり!だと思った〜」

「翔子は?決まってるの?」

「もちのろんだよ!私がスポーツ大好きなの知らない杏ちゃんじゃないでしょ?」

…予想通りだった。幼馴染って怖い。


「じゃ、さき書くね。行ってきまーす」

「うい、いってらー」

なんて会話をしているとどうやら僕が最後らしかった。


「君が最後だな…名は…」

「泉です。泉杏介」

「あぁ、泉先生の弟さんか、よく見れば似ているな目とか鼻とか」

絶対わかってなかったな。大雑把すぎる。


「書きますね」


泉 杏介 国語


 自分が書いた文字が赤く光り、今度は自分が赤く光る。

…それ以外はさしたる変化はない…が、これで異能が使えるようになったのだろうか?


「全員書き終わったな?一限はあと10分!10分で自分に何ができるようになったのか色々試してみるといい」

なるほど、試すためにグラウンドだったってわけね。


 見渡すと、それはそれは凄まじい光景が広がっていた。

炎や水や電気がグラウンドに飛び交っている。

ポケモンバトルか。


 でもねぇちゃんや襲ってきた男ほどの大きさの異能は見当たらなかった。


「不思議か?みんなが泉先生みたいに教科を操れないのが」

「そうですね」

小室先生の質問に僕は素直に答えた。

「説明したろ?その教科を知れば知るほど、得意であればあるほど愛着があるほど強くなるって。今の君では…いや一生かかっても泉先生と同じことはできないだろうさ」

この先生は読心術でも使えるのだろうか。

考えてることをそのまんま言われてすごく驚いている。


 僕が好きなものは…

と考えていると、

「君、最後に書いた人っしょ?」

どう聞いてもせっかち君の声だった。高校生活二日目。友達を作るチャンス!

「そうだ…よ?」

「「教科」でできること試していいんでしょ?なら力比べする方が手っ取り早いっしょ!」

ポケモンバトルか。

目と目もあってない人に力比べとか言うな。怖い。

だけど、試してみたいのは事実だった。


「やってみようか。痛いことはしないでよ?」

「もちろん!じゃ、対戦よろしくお願いしまーす!」

せっかちなことと僕と同じくらいポケモンが好きなことだけはわかった。

毎日更新を目指します!

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