018.吹雪と粉雪
寒いのに暖かい印象を受ける絵本って素敵ですよね
八方塞がりだった。
おそらく、絢辻の教科は英語だろう。
英単語を言っていることからも予想はたつ。
だが、引力のようなもので絢辻の方へ引き寄せられ、羅生門で塞いでもつららで壊される。
何か、何かないか!?この状況をひっくり返せるような方法は!?
必死に考える。
「icicle」
迫り来るつらら。
避けるので精一杯だった。
……避けるので精一杯?
待てよ、逃げても引き寄せられる。
遠距離だとつららが飛んでくる。
なら、距離を詰めれば、どうだ?
「gravity」
僕は絢辻の方へ引き寄せられる。
どうせ引き寄せられるなら近距離線に持ち込んでやる!
「水の東西!」
僕は手にししおどしと噴水を身につけ、引き寄せられるがままに絢辻へと向かっていった。
「icicle」
絢辻から放たれるつらら。
僕は右手の噴水でつららを迎え撃つ。
噴水の水力に負けるように、つららはシュルシュルと落ちていく。
いける!
左手のししおどしで絢辻を貫こうと構えた瞬間、
「……blizzard」
あたり一面が猛吹雪に変わる。
もちろん、水を纏っているししおどしと噴水も氷漬け。
「私があなたを引き寄せているのはつららを当てやすくするため。そんな物騒なものは私のパーソナルスペースに持ち込まないでくれる?」
「……物騒なのはあんただよ」
強がってはみたが、体が動かない。
みるみるうちに、両手の氷が全身に広がっていく。
氷漬けになるのは時間の問題だった。
目の前の絢辻はさながら雪女のように美しかった。
って、見惚れている場合じゃない。
これじゃ最初と状況が変わってないぞ。八方塞がりだ。
いや、動けない分、さらに状況は悪化していると言える。
「icicle」
くっ、かわせない……!
……まぁ僕にしては上出来か。ここまで戦えたんだから。
半ば諦め、つららを受け入れようと目を閉じた。
ドンッ!!!
強い衝撃を受け、僕の体は吹っ飛んだ。
いってぇ!これつららの衝撃じゃねーぞ、なんだ!?
何が起こった!?
と、事態を把握すべく起きあがろうとすると、僕の上に二谷が倒れていた。
「おい、二谷どうした!?」
「……あぁ、その声は泉君だね、なに簡単なことさ。敵の攻撃を受けて僕が吹っ飛んだ。君に当たって君も吹っ飛んだ。ただそれだけののことだよ」
見ると、二谷もぼろぼろだった。
どうやら助けてくれたわけではないらしい。
「泉君、気づいているかい?1-Aで残っているのは君と僕だけ。1-Bで残っているのも2人」
周りを見渡すと翔子も快斗もいなかった。
みんなやられたのか。
「なるほど、つまり」
「「僕が相手を倒せば勝ちだ」」
盛大にハモった。
恥ずかしい。
「とにかく、僕も勝つから君も頼んだよ」
そう言って二谷は二谷の敵の方へかけていった。
しかし、二谷が勝っても僕が絢辻に勝てないとどうにもならない。
流石に二体一になったら勝ち目ねーだろ。多分。
「blizzard」
吹雪は勢いを増す。
「英語と国語は同じ「言語」。教科の性質は似ています。ですが、先生もおっしゃっていました。「自分に合っていれば合っているほど力は強く、大きくなる」と」
「何が言いたいんだよ。急に饒舌になったね」
「お気になさらず。あなたを認めているのです。ですが、あなたの国語への思い入れより、私の英語への思い入れの方が強い。ただそれだけです」
吹雪はさらに勢いを増す。
おいおい、これじゃまた氷漬けだぞ!?
何か火を起こせる、僕に思い入れのある国語の力はないのか!?
この吹雪に勝る何か…。
……え?……吹雪……雪……か!?
あるぞ、あったぞ、この状況を覆せる方法が!
だが、僕のこれへの思い入れが絢辻の英語の思い入れより強いかどうか……。
僕は絢辻に視線を送る。
「どうやら覚悟は決まったみたいですね」
「ああ、どっちの思い入れが強いか、勝負だ」
「blizzard、icicle」
絢辻は冷静に、冷たく言い放つ。
猛吹雪の中、つららが飛んでくる。
僕は逃げようともしなかった。
「てぶくろをかいに」
つららも吹雪も粉雪となり、静かに、静かに舞った。
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