133.感覚と道徳
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人を殺すという感覚を体験したことがあるだろうか?
大多数の人間が否と答えるだろう。
僕もその大多数だ。
僕は、今、初めて刃物を人に刺した。
あれだけ倒したかったはずの男に竹筒を刺したのに不快感以外のナニモノもなかった。
目の前の男は何も喋らなかった。
当たり前だ。
竹筒が腹に深々と突き刺さって貫通しているのだから。
「お、おいキョウ。大丈夫か……?」
「……ああ、問題ないよ」
男は力なく僕の目の前で崩れ落ちて横になった。
これが、人を「殺す」という感覚か。
「ワルサーP38」
バンバンバンという3発の銃声が響いた。
「ふん。まだ死んでなかったろ?俺がトドメを刺しておいた。だから、「殺したのは」お前じゃない。そうだろ?」
「ええ、その通りよ。泉くん。あなたは殺人者なんかじゃないわ」
鳥谷さんと島村さんの声だった。
「……「殺したのは」確かに僕ではなくなりましたね」
やっとの思いで言葉を発した僕はどんな表情をしていたのだろう。
少なくとももう2度とこんな感覚は味わいたくないと思った。
「泉くん。あなたはまだ成長途中にあるのよ。心も、体も、教科も。教会に所属するってことは何かを守るってことなの。あなたは私たちを「守った」のよ。目的と手段を混合してはダメ。迷わないで」
……なかなか僕の道徳心をくすぐる言葉だった。
「ありがとうございます。もう、もう、大丈夫です。多分。はい」
「キョウがその喋り方の時は大丈夫じゃないときでござるよ」
「おいおいおいおい、久しぶりに会ったらなんだ?しんきくせー顔してんな、にいちゃん」
「土屋さん!?どうしてここに!?」
「あぁ?おいおいおいおい、そりゃないぜ。せっかく天野に頼まれて戦闘の処理をしにきたってのによ」
「戦闘の処理?」
「知ってるか知らねーかは知らねーがここは異教のアジトの1つなんだよ。情報の教科を使う異教徒が多いって噂だった。個人的にも興味はあったんだけどな」
「それでどうして土屋さんがここに?」
「頼まれたって言ってんだろ?「泉先生がそこにいるはずなので助けてあげてください」ってな」
やっぱり天野先生は予知能力者なのか?
「だから俺は来た。異教徒の残党や後の処理は任せとけ。泉は攫われて死んでないやつを起こして回るくらいしかすることはねーよ。その他の処理は俺の専門分野だ」
あの時は確か護送をしてたな。
護送も戦闘後の処理といえば処理か。
「なんにしてもだ!異教の主任を倒したんだ。少しは泉の名声も上がるだろうよ」
「名声だなんて……」
「いい意味でも悪い意味でもだよ」
「悪い意味?」
「おいおいおいおい、主任が倒されたんだ。異教にも泉のことが知れ渡るってことだよ。財前っていう情報主任が死んだって情報が入り次第、開かれるだろうぜ」
「開かれる?何がですか?」
「おいおいおいおい、そんなの決まってるだろ?」
「主任会だよ」