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129.消去と道徳

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 最初に見たのは戦争の映画だった。

引き金を引くだけで敵を倒すことができる。

何よりその強そうに黒く、または銀色に輝くフォルムが自分の琴線に触れた。

長射程を得意とする狙撃用の武器ももちろん好きだが、小型の拳銃の方が好みだった。

懐にそれをしまっておける。

いざというときに使えるという安心感があったからかもしれない。

その大好きなワルサーP38は今、跡形もなく消えた。


「どういう魔法なんだよ?俺のワルサーP38消しやがって」

「ゲームを作る時もサイトを作るときもデバック作業というものが存在します。不必要なものを消す作業です。私にとってあなたのワルサーP38は不必要なもの。だから消去したんです」

「ふん。拳銃は無限に種類があるんだぜ!コルトガバメントM1911!」

「デバック。拳銃」


「なっ……」


「あなたの言う通り拳銃には無限に種類があるのでしょう。ですが、デバックとは存在そのものを消去しているです。拳銃を消せばこの空間から拳銃は消えます。拳銃はもう作り出されることはありません」

「くっ……」


「落ち着いて?デバッグって消す力でしょ?向こうからは攻撃できないカウンターの力ってことじゃない」

「でもあずさ!これじゃ俺の方からも攻撃できないぞ?」

「そこは私がカバーするわ」


「話し合いは終わりましたか?」

「ええ、終わったわ」

「そうですか。あなたも私に攻撃してきてください。その攻撃を全て消し去りますので」


「デバッグって本当に必要なことなのかしら?」

「はい?……はい。ものを作るには必要な工程ですので」

「一度作られたものを消すというのは生命を消すってことよね。それは道徳的にどうなのかしら?」

「……揺さぶりのつもりかもしれませんが、私は私の行なっていることに疑問などもちません。上司の命令をこなしているだけですので」

「その上司の命令は本当に正しいの?」

「ですから何度も言いますがそこに正しさなど必要ありません」

「言葉ではそう言ってもあなたには一瞬の疑念が生まれたはず。その一瞬の疑念で十分なのよ」


「………!?こ…れは……?」


「デバッグが本当に必要なのか。あなたの上司の命令は正しいのか。ゆっくりじっくり考えましょ?私の教科は「道徳」。正しいのか正しくないのか、私と話し合ってお互いに納得する結論が出るまで、あなたが疑念を抱いたことは効果を失う!」


「……私は疑念なんて!」


「あなたのデバッグの力が揺らいだってことは迷ってるってことよ。人間は機械じゃない。考えてしまう生き物なの」


「そういうことだ。終わりだ。ワルサーP38」


 バンッ!


「急所は避けておいたぜ。お前が今の行いに少しでも疑念をもっていると分かったからな」

「相手の力を削ぎ取ることができるのはあなただけじゃないってことを覚えておいて?もう聞こえてはいないでしょうけど」

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