012.推理とひだまり
異教、ねぇちゃんを傷つけた明石が所属しているとこだ。
二谷のにぃちゃんがその異教のメンバーだって?
翔子が僕の袖を引っ張る。
「すぐカッとならない。杏ちゃんのよくないところ」
…オッケーオッケー。最後まで話を聞けってことね。
「勘違いしてほしくないんだけど、僕が兄を探しているのは異教に入りたいからじゃない」
僕と翔子は黙って聞いている。
「兄をとめたいんだ。異教がやっていることは許されることではないからね」
最後まで話は聞いてみるもんだ。
「なるほどね。異教に近づきたいというのは僕も二谷もおんなじなわけだ」
「それ、姉がらみだろ?」
僕は驚く表情を隠せなかった。
二谷…どこまで知っている?
「そう緊張しないでくれ。僕たちの休職している担任の名前と君の名前が同じこと。その担任が入学二日目に消えたこと。君が異教を探しているという情報。簡単な推理だよ」
その通りだった。
さすが理系。推理させたら一級品だ。
いや、この場合は文系理系は関係ないか。
「その通りだよ。僕のねぇちゃんは教会に所属していてね、異教に戦いを挑んで意識が戻らないんだ」
「そう…か、少し無神経に発言したことを謝るよ」
「気にしないでくれ。情報が増えたのは僕にとってはいいことなんだから」
「つまり、私たちは異教にたどり着きたい。異教は見せ合いを見ていてスカウトするかもしれない。だから見せ合いでいい結果を残したい。こういうことね?」
翔子が僕たちの結論をまとめてくれた。
「その通り、さすが海崎さん。頭の回転が早いね」
「ところでお兄さんは異教にスカウトされたのよね?なんで教会もスカウトしに来るってわかるの?」
「そこは推測。異教が見てるなら教会もかなって思っただけ。ただ、知っての通り教会は入団試験があるから見に来るかは微妙だと思っているけどね」
僕はそうは思っていないかった。
小室先生が教会のメンバーだと知っているからだ。
小室先生がスカウトマン(小室先生は女性だからウーマンか)みたいなことをしていてもおかしくない。
そう思った。でも、
「入団試験?」
「警察官になるにも試験があるだろ?それと同じで教会試験が年に一回あるんだよ、知らなかったの?」
「杏ちゃん知らなかったの?」
知らなかった。
また僕は会話に置いてけぼりだった。
「じゃあまた学校で。見せ合いの時は頼りにしてるよ」
そう言って、二谷は公園から去った。
「杏ちゃん、どう思う?」
「どう思うって?」
「二谷君のこと」
「どうって、別に。驚きはしたけど僕たちに接触した理由も分かったし」
「そう。よかった。異教のメンバーを兄にもつ二谷君のこと怒ってるのかと思った」
「翔子がカッとならないようにとめてくれたからな。冷静でいられたよ。それにさっきの話を聞いて決めたことがある」
「教会試験を受けるんでしょ?」
「やっぱりバレてる?」
ねぇちゃんも仇を取りたいし、僕みたいな境遇の人がいてほしくない。
教会にはぜひ入りたかった。
「素直はところは杏ちゃんのいいところ」
そう言って翔子は微笑んだ。
ひだまりのような温かい笑顔だった。
「なんにしても、まずは来週の見せ合いよ。私たちの教科の力をつけることも大切よ」
「そうだね」
とりあえずは来週の「見せ合い」の時間だ。
僕は久々に来週が楽しみだ、そう思った。
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