123.理由と電源
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夜の学校とはこんなにも怖いものだったのか。
1人でいるのより複数でいることの方が怖く感じた。
最初は気にしていなかったので感じなかったが、ここには脱防御壁という謎の組織に入りたい、いわば変な人が集まっているのだ。
しかもその「変」は得体の知れないものとして僕に付き纏っている。
リーダーシップを発揮している島村さんだって、気弱そうな広瀬さんだって、内心では何を思っているかわからない。
探りを入れてみるのもありなのかもしれない。
「じゃ、泉くんいきましょ」
「ええ、職員室は食堂と同じ1階ですね」
職員室は防犯上、食堂は運搬の関係上1階にあることが多いという話を聞いたことがある。
この学校もその例に漏れずどちらも1階にあるようだ。
「そういえば島村さんはなんで脱防御壁に参加したいんです?」
「あら私に興味があるの?泉くんも隅に置けないのね」
「い、いえそういうわけでは……」
いや、否定する方が失礼なんじゃないか?
「からかいがいがあるわね。単純な話よ。防御壁って、外交の障害でしかないじゃない?」
「それはまあそうですけど」
「ボランティアのようなものよ。自分の住んでいる場所が汚れたら掃除をする。それと同じで自分の住んでいる国に邪魔なものは掃除する。そうでしょう?」
「はぁ」
「歯切れの悪い返事ね。泉くんはまるで防御壁がなくなって欲しくないように感じるわね」
「そ、そんなことないですよ」
「冗談よ。そんな人があのサイトを見つけてメールを送るわけないもんね。でもおねえさんから忠告よ。相手の腹を探るときはある程度自分の腹も見せないと不審がられるのよ。今みたいにね」
「肝に銘じておきます」
もうおねえさんというような歳ではないのでは?
という言葉はすんでのところで言わずにすんだ。
我ながらナイスだ。
「あ、あのぅ……ここ……職員室じゃ?」
「あ、ほんとだわ。さすが広瀬さんね。じゃとっと入って鍵探しましょ」
職員室の鍵は開いていた。
……え?
鍵が開いている?
放送室の鍵は閉まっているのに?
「島村さん!危ない!」
「え?……きゃっ!!」
鍵が開いているということは誰かがいるということだ。
そしてこの状況でいるとしたら、敵キャラ以外あり得ないだろう。
「おい、快斗!聞こえてるだろ?快斗!」
紛れもなく快斗だ。
ていうか快斗が飛びかかってそれを避けて「きゃっ」ですむ島村さんすげーな。
何か運動でもやっていたんだろうか?
「今、岡村さんに連絡して応援を呼ぶわ!」
広瀬さんもスマホを片手に立ち止まっている。
ピロン、ピロン
と、不思議な音がスマホから鳴る。
二重に聞こえたということは島村さんと広瀬さんのスマホが鳴ったのだろう。
電源を切れ
不意にその言葉が頭をよぎる。
「……待って2人とも!スマホの電源を!!!」
時すでに遅しとはこういう時に使うんだろうな。
不謹慎にも僕はそんなことを思った。