111.海中と敗走
毎日更新を目指します!
感想、評価、ブックマーク、なんでも励みになってます!
よろしくお願いいたします。
心のどこかで翔子は負けない。
基本一緒にいたからいなくなることはない。
そんな安心にも似た感情をもっていた。
だからこそ僕は妙さんとのお喋りに興じることができた。
「湊ねーさん!ご無事で!」
「当たり前よ。あたしが負けるわけないでしょ」
「知っています。でも心配なものは心配なんです」
「水の東西!!」
パシャン
そんな力のない音がして僕の攻撃は無力化される。
「あたしが海に引き摺り込んだ時点で、得意フィールドは水中!水を使った攻撃くらい受け流される。そんなことくらい予想できてもよさそうなもんだけどね」
「だからといって攻撃しない理由にはならないでしょう?あなたが浮き上がってきて翔子がきていない。それで理由は十二分です」
「早まるな」
バシャと湊さんが海中から手を挙げる。
「翔子!!」
その手の先には気絶している翔子の手が握られていた。
「思ったより強かったぞ。まああたしほどじゃないけどな。ほら受け取れ」
「……っとと!?」
翔子が僕目掛けて投げられる。
危うく抱き損ねるところだった。
「湊ねーさんとどめはさされないのですか?」
「うん、満足した。防御壁に関しては異教がどうにかしてくれるでしょ。あたしらが表立って動かなくてもね」
「そうですね。湊ねーさんの言う通りです」
「さ、帰るよ」
「はい」
スッと湊さんが船上へと登ってくる。
「君は、そうか。戦闘の形跡はないな。妙と話すという道を選んだんだな。悪くない。だが、戦闘の意思がないのであればこの船から降りてもらえるかな?」
「翔子が傷つけられてるんですよ?戦闘の意思はあるに決まってるじゃないですか!」
「その人は君の手元に戻ってきた。敵と認識しているあたし達も退こうとしている。それでも戦闘するというのか?それは復讐を通り越してただのバカだとしか思えない」
ぐっ……。
「泉君、湊ねーさんの言う通りです。それに泉君からはもう戦闘の意思を感じません。自分を偽るのですね。私の一番嫌いなタイプの人間です」
「早く退け。あたしの気が変わらないうちに」
「……ふねくんのたび」
「そうだ、それでいい」
僕は翔子を乗せてその場を去る。
これは守られたわけではない。
そう自分に言い聞かせて僕はその場を去った。
「湊ねーさん、次はどう動きますか?」
「んー、しばらくは休憩でいいかな。あの子も相当強かったし。あたしくらい強くなるまで待っててもいいって思えるくらいに」
「そう…ですか」
「さ、帰るよ妙」
「はい、湊ねーさん」
こうして、2隻の船は宗谷岬を後にした。




