103.免許と最北端
結論から言うと目的地に辿り着くまでとくに面倒ごとは怒らなかった。
びっくりしたのは翔子が車を運転してくれたことだ。
「翔子、免許は?」
「ちゃんと教習受けたわよ。免許取るのに2日もかかっちゃった」
早すぎるし、免許って18にならないと取れないんじゃなかったっけ?
「さては翔子、歳サバよんだな?違法だぞ?」
「サバは下によむものよ?それに違法じゃないわよ!教会のメンバーは免許系はほんとは無くても乗れることになってるんだから!講習受けなくてもいいのよ?」
「え、まじで?」
交通費が後払いなのはそういうことか。
基本は自分の足で行けってことね。
「でも誰かを乗せるってなったら怖いじゃない?だから超真剣に講習受けたんだから!安心して乗ってていいわよ!」
まあ翔子がそう言うんだから安心して乗っていよう。
「翔子は僕がメールしてない間はどんな修行してたんだ?」
「そーねー、杏ちゃんがメール返してくれなかったから寂しかったわ」
やべ、地雷踏んだか?
「でもこうして会えてるから気にしてませーん」
「絶対気にしてるじゃん」
「教科の使い方とか教えてもらったよ。でも1番は身体の使い方かな。変な意味じゃないよ。戦いにおいてどういう風に身体を動かせばいいのかってこと。当たり前だけど戦闘なんてほぼしてこなかった人生だったから初めて知ることがたくさんだったわ」
保健体育の修行って字面はなんか艶かしいけど実際はめっちゃ厳しいんだろうなぁ。
「杏ちゃんこそどんな修行してたのよ?」
「僕は、そうだなぁ、真っ暗闇で2人きりで閉じ込められて蝶になったりしたよ」
「えぇ!?」
ガタンッと大きく車が揺れる。
「おいおい、翔子。安全運転で頼むよ?」
「杏ちゃんが変なこと言うからでしょ?そ、そ、その2人っきりって誰と?」
「ケンだよ」
「なーんだ、健太くんか」
「なーんだってなんだよ、なーんだって。もっと別の人ならよかったのか?」
「考えうる限りで1番マシな解答よ」
車のスピードが上がる。
また地雷踏んだか?
「蝶になったっていうのは?」
「ほら、天野先生は国語主任だから。想像力の塊だよ」
「ふーん」
翔子は明らかにさっきより興味が無さそうだった。
「杏ちゃんあと10分くらいで着くわよ」
「へーい」
僕も適当に相槌をうった。
「う、海だ」
「何言ってるのよ、当たり前でしょ?日本の最北端なんだから。車で移動できるのはここまでね。あとは泳いでいきましょ」
「嘘でしょ!?」
「何言ってるのよ、嘘に決まってるでしょ?」
どうやら翔子は修行でびっくりさせることを覚えたらしい。
「普通は船で行けるんだけどね。私たちはどうやっていこうね?」
考えてなかったのかよ。
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