100.まだとぷんぷん
100.まできました。区切りがいいですね。
「いや、落ち着けよ翔子、まだ何もされちゃいないさ」
「そ、ならいいわ」
翔子は知らない。
平が翔子に化けて僕の前に現れたことを。
翔子は知らない。
平が僕に手を組むことを提案したことを。
翔子は知らない。
平に僕がその答えを言っていないことを。
「あなた機上にいたうちの1人ね?杏ちゃんに何の用かしら?」
「っははっ!用?用事ねぇ。用ならもう終わったさ。俺はこれから帰るのさ」
「帰る?逃がすとでも」
「土屋風に言うなら、おいおいおいおい、自分の力量わかってるのか?自分の身の安全を考えろってことか。その意味がわからないほど馬鹿じゃないだろう?教会保健体育所属、海崎翔子」
「……私の名前知ってるのね」
「異教の情報を甘く見ないでほしいな」
「誰から聞いたの?」
「っははっ!企業秘密さ。それに東のやつも助けとかないといけねーからな」
そういえば。
もう1人はどこに行ったんだ?
「何不思議そうな顔してんだよ?そっちの海崎は東と一戦交えたから教科も異能もわかってんだろ?あいつは範囲攻撃には弱いのさ。そして沸騰した水なんて相性最悪さ。何せ鏡が曇っちまえば何にもできねーからな」
何の話だ?
鏡?
「もう1人が鏡を使う異教徒だったのよ。杏ちゃん飛行機の上から落とされたでしょ?その時、その人が瞬間移動したように見えなかった?」
「ああ、確かに。何の前触れもなく押されたんだ」
「鏡を使う人だったのよ。それで自分をそこにいたように見せてたわけ」
「ああ、なるほど。だから湯気に弱い。そういうことね」
「っははっ!そういうわけだ。だから今頃泉の作り出した鍋が防ぎきれなくて人間フライみたいになってるかもな」
こわ。
自分が使った技だけど改めて言われるとこわっ。
「じゃ、そう言うことだから「また」会おうな」
スッと平が僕に近づき、ポケットに何かを差し込み、そう言ってまた去っていく。
「あ、こらっ、待ちなさい!もう、杏ちゃんもちょっとは危機感もってよ!異教なんだよ?そーゆとこ杏ちゃんのよくないところ!」
おぉ、さすがは本家。
実家のような安心感だ。
「本当に何にもされてないんでしょうね?杏ちゃん?」
「ほんとだってほんと。まだ何もされてないよ」
「まだって杏ちゃん……。もー!よくわかんない!」
「と、とりあえず無事だったんだ。そうだ、保健体育支部に連れて行ってくれよ。天野先生から言われて北海道に来たんだよ」
まあ、実際は北海道支部に行く必要はないのだが。
まだ天野先生から詳細な任務内容のメールも来てないし、わからない以上行く場所もないし。
翔子と一緒に行動するのが無難なのかもしれない。
「オッケーオッケー!じゃあ北海道支部に行きましょ!」
お、結構ぷんぷんしてるのかと思ったけどそうじゃないみたい。
ちょっと安心。
「なかなかメールを返してくれかなった理由、しっかり教えてくれないとね?」
こわ。
全然翔子はぷんぷんだった。
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