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護衛長グレンダ

【東暦 一〇〇五年 三の月 五の日】


 ロメリアを迎えに公爵家から人が来るまで紫苑は悠々自適に暮らしていた。といっても街の責任者に訝しまれているのか尾行を付けられていたので、撒きながらローラルナの街を堪能していた。


 ロメリアを襲っていた追手たちから奪った貴金属も売り払って現金に換金していた。一方のロメリアはというと軟禁状態である。


 そして三日後、紫苑は予定通りに領主の館へと向かった。そこに居たのは白髪と白髭を綺麗に整えた気品のある老人とポニーテールで釣り目の女性であった。


 一目でわかる。女性は強い、と。紫苑は自身と同等かそれ以上の実力者だと判断していた。おそらくはシュティ大公家の衛兵長かロメリアの護衛か。あるいはその両方か。


「お名前をお伺いしても?」

「私はロメリア様の護衛長であるグレンダである。さっさとお嬢様のもとへ案内しろ」


 答えたのは女性の方だけであった。そして紫苑を急かす。しかし、紫苑は動じない。ここで紫苑を殺したら二度とロメリアには会えなくなるのだ。殺せるわけがないのだ。


「申し訳ございません、グレンダ様。明日の朝、日の出とともに街の入口にて待ち合わせをと卑劣な夜盗から伺っております。解放の条件もその時に話すと。どうか、その指示にお従いください」


 そう言われてしまったらグレンダとて引き下がるしかない。彼に詰め寄っても詮無きことだからである。苛立ちを露にしながらも、わかったと一言呟いて紫苑を開放する。


 そして紫苑が帰る。後ろに二人の尾行。紫苑は人混みに紛れて尾行を撒く。しかし一度、尾行を撒いている。前回よりも尾行を撒くのは難しくなっているだろう。


 大通りから細い道に入り、また大通りに出る。そして酒場に入ってすぐ出る。突然走り出し、角を曲がったところで隠れる。そんなことをして何とか尾行を撒くことに成功した。


 あからさまに尾行を撒き過ぎだが、紫苑は知らぬ存ぜぬで通そうとしていた。逆に何故自分を尾行するのか、それを問い質そうと思っていたのである。


 宿に戻る。そこには美しい町娘に扮装したロメリアが暇そうに外をじっと眺めていた。扉が軋む音で紫苑が返ってきたと判断したロメリアが子犬のように扉に駆け寄った。


「おかえりなさい。今日は遅かったですね」

「ああ、悪かった。ロメリアのお迎えが来たから会ってきたんだ」

「ホントですか!?」


 ロメリアが前のめりになる。彼女にとっては嬉しい知らせだ。紫苑は椅子に腰を落ち着かせ、彼女に今日あった出来事を詳しく説明する。


「グレンダという女性と髪も髭も綺麗に整えた白髪の老人が来ていた。心当たりあるか?」

「グレンダは私の姉みたいな存在です! 彼女ならば信頼できます! もう一人は執事のレノールだと思います!」


 息を巻いて紫苑に説明するロメリア。ロメリアと紫苑の距離が近い。紫苑はロメリアを落ち着かせる。それならばと紫苑はグレンダに全てを包み隠さず話す方向で計画の完遂を狙うことにした。


 ◇ ◇ ◇


 翌朝、紫苑は日の出よりも早く街の門の前に待機していた。紫苑は十分ほど待っていただろうか。グレンダが昨日よりも厳しい目つきで紫苑を睨みながら近づいてきた。


「案内します」


 紫苑が手短に言う。グレンダは頷くばかりだ。そして二人で門を抜け、そのまま直進して紫苑が原っぱの真ん中で立ち止まる。そして周囲の気配を探る。ここならば安心して内緒話が出来る。


 紫苑は口元を布で覆った。口の動きを悟られないためである。それはさながらギャングのようであった。どこで誰に見られているかわからない。念には念を、である。


「どうした?」

「今から言うことに対し、驚かずに静かに聞いてください。理解したならばゆっくりと首肯を」


 紫苑の雰囲気が変化した。グレンダはそれを敏感に感じ取っていた。静かに頷くグレンダ。それを確認してから紫苑は歩き出し、そして静かに話し始めた。


「ロメリアお嬢様は私が保護しています。四、五名の男どもに追われていました。今は安全な場所で待機していただいております。ロメリアお嬢様に確認すると、グレンダは信頼のおける人物、彼女に任せなさいとのことでした。私には誰が敵で誰が味方かわかりません。ご指示を」


 グレンダも最初は驚いていたが、しかし、直ぐに理解し納得した。彼女もロメリアが狙われていることを理解していたからである。紫苑の横に並ぶグレンダ。


「まずはお嬢様の保護、感謝する。お嬢様を狙った不届き者は?」

「全員この世にはおりません」


 その一言ですべて理解するグレンダ。ただ、首謀者を吐かせたかったという思いもあるが、ロメリアの安全には変えられない。頭を切り替え、ロメリアをどうやって安全に屋敷へ連れ戻すか、である。


 道中が安全とは限らない。そして誰が味方かもわからないのだ。紫苑は誰が敵で誰が味方かわからないと話したが、グレンダもまた、わかっていないのである。


「お嬢様に会うことは?」

「可能です。ただ、その場合は居場所を公開すると同義になりますがよろしいですか?」


 遠回しに危ないぞと警告する紫苑。その言葉を受けてグレンダは考えを改めた。だがしかし、どうすればロメリアを救えるのか、妙案が浮かばない。


「一つ、よろしいですか?」

「なんだ?」

「考えがあります」

「聞こう」


 紫苑は自身の考えを述べた。それはこうだ。まず、グレンダには馬車と御者を用意してもらう。そしてロメリアを誘拐した夜盗に支払うためという名目で馬車に荷を積む。


 その荷の中にロメリアを紛れ込ませるという考えだ。ロメリアを大樽の中に入れて馬車に積もうというのだ。あとは移動の最中に御者とロメリアをすり替えれば終わりである。


「悪くない案だ」

「では、夜盗から金銀財宝と食糧を要求された。その線で用意をお願いいたします。私は食糧を用意いたしましょう。その中にお嬢様を紛れ込ませます」

「わかった」


 そこから細かい打ち合わせをして適当に歩いてから街に戻る。その最中、紫苑はグレンダに手を差し出した。グレンダは紫苑に尋ねる。


「なんだ?」

「食糧を買い込むお金を」


 笑顔で金銭を要求する紫苑。使ってしまうお金とは言え、大金を恵んで貰うのは気持ちが良い。グレンダは必要経費だと割り切って紫苑に金貨を二枚手渡した。


 金貨一枚を現代日本の金銭感覚に相当させるとおよそ十万円である。二十万もあれば、二樽は買える計算になる。麦に関しては一樽一金貨なのだ。


「ではまた、明日の夜明け前に」

「承知した。お嬢様をよろしく頼む」


 お互いに作業内容などを確認し紫苑とグレンダは別れたのであった。

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