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陣営の切り崩しを狙おう

本日、頑張って更新しますのでポイントください。

なんとかランキングのトップに食い込んでみたいです。


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私を助けると思ってください。

 シオンはクリュエに要求する。オペチャム子爵を味方に引き入れろと。そうすればラースル辺境伯領の北側は完全にクリュエ派になるのだ。


「いや、そうしたいのは山々だがどうやって引き込めば良いのだ?」


 そう。クリュエとしても引き込めるのならば引き込んでいるのだ。その方法がわからないので困っているのであって。そんなクリュエにシオンの毒牙が伸びる。


「坊ちゃま主導で街道の整備を行いましょう。失礼」


 シオンが地図を用意する。シオンが地図を持っているということは、インの入れ知恵を事前に貰っていたということなのだ。その地図を使って説明を続ける。


「このラースル辺境伯領の領都であるラースリアから北東に道を伸ばし、新たにオペチャム子爵領の第二の都市、レイラノッドにつなげる事業を共同で行うのです。もちろん、私たちも協力しましょう」

「そ、そんなので味方に引き入れられるのか?」

「少なくとも嫌悪はされないでしょう」


 インは何を狙ったのか。簡単なことだ。純粋にクリュエとオペチャム子爵が接触する機会を増やそうとしたのだ。また、街道を伸ばしてくれるのである。嫌な顔はしないだろうとの判断だ。


 そしてシオンは嵐を呼ぼうとしている。兄弟喧嘩という名の嵐を。シオンは嵐の中でこそ輝くのだ。昔、そんな歌があったなとシオンは思っていた。


「このままじっとしていてもチャンスは転がってきませんよ? いや、むしろ……」


 嫌な部分で言葉を区切るシオン。クリュエはその続きを想像し、ごくりと喉を鳴らした。


「そうか、そうだな。よし、今すぐオペチャム子爵のもとに向かおう!」


 その言葉を聞いてシオンは安堵の表情を浮かべるのであった。


 ◇ ◇ ◇


 クリュエはシオンに連れられてオペチャム子爵の元を訪れていた。もちろん、父であるデリクに断りを入れ、先触れを遣わせてである。勝手に振舞う勇気はクリュエにはない。


 オペチャム子爵はシオンとクリュエを丁重に持て成してくれた。わざわざ敵を作る必要もない。持て成さない理由がないのだ。極めて道理に沿った行動である。


「クルーゼ=フォン=オペチャムだ。シオン=バレラード准男爵にお会いするのは初めてですな。これからも良き隣人としてよろしくお願いしたい」


 クルーゼ=フォン=オペチャムと名乗った男は三十前後の紳士的な男性であった。どうやら代替わりを果たしたばかりのようである。先代のオペチャム子爵――彼の父――は帝都で余生を過ごしているようだ。


「こちらこそです、閣下。若輩者ゆえ色々とご迷惑をお掛けするかもしれませんが寛大な心でお許し願いたく存じます」


 シオンとクルーゼが和やかに話を進める。そこに割って入ったのがクリュエであった。あからさまに上がっている。シオンですら気が付いたのだ。クルーゼも気が付いているだろう。


「さっ、早速だが本題だ。オペチャム卿、新たに我が領との街道を整備してみないかね?」

「これはまた急なお誘いですな。具体的な内容をお聞きいたしましょう」


 クリュエが具体的な話を始める。と言ってもシオンとあらかじめ打ち合わせしていた通り、ラースリアからオペチャム子爵領の第二の都市レイラノッドへ道を伸ばすだけである。


 その距離は十キロ前後。さらにレイラノッドから北に五キロ強進んだところにバレラード村が存在している。シオンにとってもレイラノッドは物資補給の重要な拠点なのである。


 そもそもレイラノッドは人口が五千人の大きな町なのだ。オペチャム子爵領で二番目に大きい街で既にバレラード村よりも五倍多い。これが子爵領の領都だと更に差が開くことになる。


「それは良い話ではあるが、如何せん懐事情が……」

「もちろんである。持ち掛けたのは私だ。私が予算は出そう。その代わり、当家のビネガーと蝋燭の税を減税していただきたい」


 目を瞑ってクルーゼが考える。もし断った場合、今までの生活に変化はない。いや、辺境伯との関係が少し拗れることが予想される。これはデメリットだ。


 逆に承諾した場合は街道の整備は進むのだが税収が減ってしまう。街道の整備をしてもらうのだから止むを得ないだろう。


 つまり、税収の減りよりも街道の整備にかかる費用が高いのであれば受けるべきなのだ。


「では、減税だが、それらの税収から一割を『クリュエ様に』返還する、というので如何でしょうか?」

「その条件で構わない。これからもこのクリュエをよろしく頼むぞ。まずは連絡の方法だが――」


 クリュエは何も疑うことなく二つ返事で了承した。というのも、彼の父はこの街道整備の事業の話を聞いた時、クリュエ自身がステップアップするための勉強代だと割り切っていたからである。


 帝国の北方の盟主であるラースル辺境伯は周囲の街道の整備を行う必要がある。所謂ところのノブレスオブリージュだ。


 なので、クルーゼが費用を出せないと言っていたら全て自費で行っていただろう。


 クルーゼも貴族としての面子があるため、条件を飲んだ側面を併せ持っている。貴族に大事なのは誇りと面子の二つのみなのだ。しかし、それを持ち合わせていない者もいる。シオンだ。


「助かります。我が領には商会も無く、物資の調達に難儀していたところなのです。これで麦や塩の輸送が楽になります」


 にこやかに、悪びれもなくさらりと話すシオン。暗にクリュエがレイラノッドからバレラードまでの街道整備を行うのだと言っているようなものである。そして実際に行ってもらうのだろう。


「これからも良き隣人であらんことを」


 今回の会談で一番の利益を得たであろうシオンは、本日一番の笑顔を見せたのであった。

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