お水が欲しい
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【東暦 一〇〇五年 五の月 一の日】
このバレラードの地にようやく羊が届いた。羊なんてものは乳を絞って良し、食べて良し、毛を刈って良しの三拍子揃った生き物なのだ。買わない(飼わない)という手はない。
餌もその辺の草を食わせておけば良いのである。シオンはテレビで芸人が山羊だか羊だかと一緒に田舎町をぶらぶらするバラエティ番組を思い出していた。
もちろん、繁殖目当てで将来的な資金源として育てるのであれば餌には気を使った方が良い。しかし、今の状況ではその餌を捻出するのも難しいのである。当分は雑草で凌いでもらうしかない。
「あー、暇だなー」
羊を囲うための柵をつくるため、杭を打ちながらシオンは独り言つ。彼は今まで斬った張ったの世界で生きていたのだ。領地の内政が退屈に感じるのは無理はない。
人とは欲深い生き物である。現実世界に居た頃は異世界へ行きたい、平穏な生活は嫌だ、と思っていたにもかかわらず、いざ来てみると平穏な生活が良かったと思うのだ。
そして異世界で命を賭けて小さな成功をし、悠々自適な生活が出来そうになったら今度は殺伐とした世界が懐かしく思えるのである。
杭を打ち、そして木の板を貼って柵にする。それらを新たに雇った兵たちと共に励み、領主の館の隣に百坪ほど羊の牧場が誕生した。
さて次は羊たちの小屋に着手しようとしたところでシオンはいつの間にかそばに来ていたエメに袖を引っ張られた。
「どうした。エメ」
「ちょっと相談がある」
エメが相談だなんて珍しいと思ったシオンは、小屋づくりをそのまま配下のアレンたちに任せ、彼自身はエメの話を聞く。
彼女はシオンを屋敷の執務室まで連れて行く。中にいたインとララが二人をちらちらと見ていた。どうやらインとララもかかわっているようだ。
「で、話って?」
「水がなくて困ってる。水を分けて欲しい。何でも言うことを聞くのでお願いします」
深く頭を下げるエメ。驚くシオンとイン。ララは平静を装っていたが内心はどぎまぎしていた。とりあえずシオンはエメの頭を上げさせる。
「ちょっと意味が分からないな。水が足りないというのはどういうことだ?」
「井戸の水だけでは畑に水を与えられない」
エメが言うには井戸の水を枯らす訳には行かないので、大量の水を使えない。しかし、雨水を貯めておくにも限度がある。そこでシオンの私物である産水の魔石を使わせて欲しいとのことであった。
シオンとしては最初から村のために使おうと思っていたのだが、エメはシオンの私物だから筋を通さなければならないと思ったのだろう。正しい考え方である。
「エエエエメちゃん。軽々しく何でもいう事を聞くなんて言っちゃ駄目だよ!」
「別に。シオンなら良い。シオンは、シオンなら信頼できる」
動転しているイン。逆にエメの方が落ち着いていた。シオンも男なのでやましい考えが頭を過ぎるが振り払い、今は政務に集中する。産水の魔石を貸し与えることは問題ない。問題なのは盗難や紛失だ。
「エメは水を手に入れることが出来れば良いんだよな?」
コクリと頷く。それならば考えるべきは用水路をつくることだ。出来るならば水を汲みに行く手間も省きたいところである。インに声をかけるシオン。
「イン、この村の地図を」
「はいです」
インがつくったバレラードの詳細な地図だ。領地が広くないため、そう時間はかからずに地図を製図することが出来た。主要な部分の精度も悪くはないとシオンは思っている。
「水が欲しいのはこのあたりだな。しかし、ここに置いておけば盗難の恐れがある。そのため、この屋敷の中から……こう掘り進めて最後に溜め池をつくる。これでどうだ?」
インとエメが真剣な表情に切り替わる。そして、二人であーでもないこーでもないと話し始めた。どうやら良い方向に転がり始めたようだ。
「もっと柔軟に考えろよ。別に溜池は一か所じゃなくても良いんだからな」
「ですが、湧き出す量がそう多くないので、分散してしまうと水が貯まりませんよ」
シオンが良いことを言おうとしたのだが、インがそれを一蹴する。そして悟る。シオンはこの件に関して口出しをしてはいけないと。彼が考えるのは防犯の方だろう。
産水の魔石を盗もうと考える輩は少なくはない。何せ手に入れれば大金が保証されるのだから。ただ、警備に割く人員も限られている。さてどうしたものかとシオンは頭を悩ませていた。
「シオンさん、決まりました。このお屋敷から村の外れを通って畑のこの位置に溜池をつくりたいです」
シオンはインと共に地図を見る。その予定を見るとどうやら一キロ強の用水路をつくらなければならないようであった。しかし、これも村の発展のためと割り切ることにする。
「それは構わないが、この産水の魔石を盗まれないようにするにはどうすれば良いんだ?」
そう尋ねると意外な答えがエメから帰ってきた。どうやらこの問題に対する解決法は編み出されているらしい。シオンは傾聴する。
「沈めればいい」
そう。沈めるのである。つまり、家の中に深さ三メートルほどの水汲み場をつくるのである。その中心に産水の魔石を発動状態にして沈めるというのだ。
「魔石を発動状態にするにはどうすれば良いんだ?」
「あらかじめ数百年分の力を注ぎ込んでおけば大丈夫です。あまり大きな魔石ではありませんし、私でも出来ると思います」
インが答える。シオンは魔石や魔力といった魔法に関しての知識には人一倍疎い。この件はインに任せることにした。シオンが行うのは二つ。一つは魔石を安置させるため屋敷に水汲み場を用意すること。
そしてもう一つは用水路と溜池を作成することである。どちらも力仕事だ。シオンは羊の小屋づくりをしているアレンたちを呼び出し、今度は穴掘り作業をさせるのであった。
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