手探りの領地運営
本日、頑張って更新しますのでポイントください。
なんとかランキングのトップに食い込んでみたいです!
また、モチベーションにもなりますので、ご協力をよろしくお願いします。
私を助けると思ってよろしくお願い申し上げます。
【本文】
【東暦 一〇〇五年 四の月 二十八の日】
シオンのもとに十人ばかりの若者が群れをなしてやって来た。話を聞く限り、どうやらベンに紹介され、シオンのもとを訪ねたらしい。そう、兵士に志願しに来たのだ。
彼らは自分で兵士になる選択をした十人である。シオンはそれを喜ばしいと思った。彼らは兵士として生き、兵士として生計を立て、そして兵士として死ぬのだ。
シオンは彼らの名前を記憶していく。アレン、イムス、ウッド、エレン、オルグ、カース、キアヌ、グールド、ゲイナー、コスタの十名だ。シオンは彼らの志願を心から歓迎していた。
「君たちには期待している。これからよろしく頼むぞ」
「は、はいっ!」
「はい!」
「はーい!」
返答する十人。シオンが彼らにまず行うことは集団行動であった。規律と統制。これが取れているだけで軍としては強い。シオンはそれを理解している。
なので、集団行動の訓練と基礎体力の訓練を行うことにする。集団行動は指示通りに動くことが出来るのかどうか。基礎体力は実益も兼ねて畑を切り開くことにした。これはエメの要望でもある。
「全員、整列しろ」
パラパラと並んでいく。そこでシオンは叫んだ。駆け足と。その声の張りに驚く十人。ひと呼吸あいてから全員が駆け足で行動し始めた。
「全体、右向け右っ!」
バラバラと右を向き始める十人。それもそうだ。これが出来るのは日本人だけである。日本人は小中高のどれかで集団行動を叩き込まれるのだ。シオンにとっても、今となっては良い思い出である。
知らなければ出来ない。やろうと思わなければできない。手本を見せてやらねば出来ない。シオンはまず、集団行動とは何かを教えることからはじめたのであった。
◇ ◇ ◇
その後、シオンのもとに追加で十五人の兵士志願者がやってきた。併せて二十五人である。後の五人は仕方ないが徴兵することにしよう。有事の際、この三十人で事態に当たるのだ。
シオンは毎日毎晩、徹底的に集団行動と基礎体力作りをさせた。お陰でシオン直轄地の畑がサッカーのコートくらいの広さに届こうとしている。これをエメ一人で管理するのは無理だ。だが彼女はそれを喜んでいた。
そんなことをしているうちに季節は春から夏に変わろうとしていた。村の大工に馬小屋を依頼し、行商人に羊を十頭お願いする。徐々にお金が切り崩され始めた。
初期投資というのは何よりも大事だ。そう自分に言い聞かせ、シオンはお金を使っていく。今、早急に行わなければならないのは商会の誘致である。物を売買できなければ蓄えは増えない。
最初の計画で、インはこう話していた。この村を商いの要衝にすると。しかし、その計画は遅々として進んでいない。それもそうだ。辺鄙過ぎるのだ。帝国、王国、商業連合の中間になるにもかかわらず、中継地としても使われていない。
帝都からも遠く、名産もない。国境沿いということは危険も隣り合わせなのである。帝国内の商店は支店を出したいとは思わないだろう。シオンならばそう考える。
問題はそれをインに告げるかどうかだ。シオンはインに村の運営を一任した。なので、口を出すべきでないとも考えられる。しかし、このままでは将来的にじり貧だ。
そんなことを考えていると執務室のドアが開いた。入ってきたのはインである。執務室にはシオン、イン、ララの三人の机があった。
聞いてみるべきか。それともまだ待つべきか。悩みどころだ。インもそれを感じているはずだとシオンは考えている。
「羊が届くのはいつ頃だ?」
「二十日後ですね。まだまだ先です」
シオンの質問に応えたのはララだ。羊を飼うのならば餌も必要になる。シオンは餌に関してはエメが新しく耕した畑で馬の餌も羊の餌も育てて欲しいとお願いするつもりであった。
もちろん、本人が許可してくれたらであるが。ちなみに羊は雄雌それぞれ五頭ずつ仕入れた。ここから繁殖させて増やしていくつもりである。
「今のところ、収支は赤字だな。そろそろ黒字化させたいところだが、何か良い案はあるか?」
インに自然な形で話を振る。これでシオンはインに尋ねたかったことを尋ねられると内心、小躍りしたいくらいに喜んでいた。静かにインの答えを待つ。
「あの、その……も、申し訳ございません!」
盛大に謝罪をするイン。シオンとしてはどうするかの案が欲しかっただけに謝罪が口から出た時にはポーカーフェイスを維持するので精いっぱいであった。
「どうした。何かミスを侵したのか?」
「いえ、その、最初の案ですが、全く進んでいません……」
商館の誘致のことだろう。進んでいないことはシオンも理解している。ただ、だからといって彼女が無能というわけではない。
戸籍の整備は見事だったし、税の見直しも行っている。政を行う上での基礎は築けたのである。シオンは彼女を高く評価していた。
「あー、いや、別にそれに関してとやかく言うつもりはない。理想と現実が違うなんてことは稀によくある。それよりも今後どうするかが大事だ」
初期の仮説が外れるのは当然である。そこからどうやって成功に向けて軌道修正できるか、どれだけ早く失敗から立ち上がれるかが、その人物の真価と言えよう。シオンはそう考える。
「要は税収を黒字に出来れば良いんだ。その為には外貨を稼ぐ必要がある。つまり、売り物を作れば良いんじゃ無いか。何か売れそうなものはあるか?」
我ながら名案だと言わんばかりに胸を張るシオン。その『売れそうなもの』まで理解できていれば名案だっただろう。シオンの問いかけに誰も回答しない。
「何も無いのか」
「はい……ないです」
泣きそうな顔でこちらを見るイン。それは困った。兵士と羊の餌を支払って破産にはなりたくない。そこでシオンはその答えをエメに求めることにした。
日が暮れて畑から戻ってくるエメを捕まえ、執務室に連れてくるシオン。そこではインが泣きそうな顔でエメを待っていた。
「エメぢゃーん。待っでだよぉー」
「……シオン。インを虐めるのは良くない」
「いや、別に虐めてねーよ。それよりもエメ。今耕している畑では何を育てるつもりなんだ?」
エメが小考してから答える。そしてこう答えた。「マメ」と。最北の地であるこのバレラードでは育つ作物も限られている。そこで生育が早く、汎用性の高いマメに焦点を当てたようだ。
「なんで豆なんだ?」
「ここが寒いから」
問いには答えた、話は終わりだと言わんばかりに口を閉ざすエメ。しかし、それではシオンには何にも伝わらない。
こういう点が人から疎まれていたのだろうと思いながらも、根気強くエメに尋ねる。シオンは辛抱強く彼女から言葉を引き出した。
「寒いと豆になる理由は?」
「作物の栽培で現金化が難しい」
「あー、ということは、他で現金化する必要があるということか」
コクリと頷くエメ。また話は戻る。現金化できる何かを育てるということに。シオンは頭をフル回転させた。何故、豆なのか。豆じゃないと行けない理由があるはずだ。
「ああ、そうか。家畜の餌になるから豆だと言ってるんだな。考えることは一緒だったな」
「そう。それに人間も食べられる」
エメは満足そうに頷く。やっと我が意が通じた。そんな感じだ。こんな性格もあってエメは今まで忌避されてきたのだろう。シオンはそう思う。
シオンは羊を十匹購入した。羊は羊毛が獲れるし、羊乳でチーズをつくることが出来る。もちろん、羊肉にすることも可能だ。
パルミジャーノチーズは最長で一年は持つ。熟成を含めれば二年以上は持つのだ。
また、現代のパルミジャーノチーズは銀行で保管されていることをシオンは知っていた。チーズが担保になるのだ。
長期保存出来て価値がある。気温が低くても、いや低い方が管理しやすい。そこから導き出された結果は推して知るべしである。
「わかった。イン、今日から我が領では羊を増やしてチーズを量産する。その方向で調整してくれ」
「はいっ!」
「エメは餌用に豆と麦。それから牧草を育ててくれ」
「あいあーい」
彼らは羊乳でチーズをつくるつもりだ。なので、パルミジャーノというよりはペコリーノ・ロマーノになるだろう。それでも半年は持つ。保存食としては最適だ。
「何はともあれ、まずは繁殖だな。目指せ百匹!」
道筋は見えた。あとはそこに向かって走るだけである。シオンは段々と領地の運営が楽しくなり始めていたのであった。
励みになりますので、評価とブックマークをしていただければ嬉しいです。
ブックマークだけでも構いません。登録していただけると助かります。
評価は下の☆マークからできるみたいです。評価がまだの方は押してみてください。
私の執筆意欲の維持のためにも、ご協力いただけますと幸いです。
今後とも応援よろしくお願いします




