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街へ向かおう

「っと、街に向かうその前に。お、居た居た」


 紫苑は生き残っている追手に対し、こう述べる。ただ、追手は腕を切断され、今にも出血多量で死にそうであった。そんな追手に対し、こう述べた。


「ここから最寄りの街は何処だ?」


 もちろん、こんなことを聞いても追手は答えないだろう。そのことは紫苑も重々承知していた。なので、追手にこう告げる。


「道を教えてくれたらお前を助けてやる。お前を街まで連れてってやるよ」


 賢い提案だろう。生き延びるための希望をちらつかせるのだ。そして耳元でさらに追撃をする紫苑。ロメリアが匿ってくれるだの、雇い主から逃げるだけのお金を与えて解放するだの、あることないことを吹聴した。


「こ、この場所から北上したところに街があったはずだ。ローラルナの街だったと思う。そう小さな街ではないはずだ」

「そうか。じゃあ行こう」


 紫苑は男を馬に乗せる。ロメリアも自分の白馬に跨った。そして追手の馬も引き連れながらローラルナの街を目指して馬を走らせた。幸いなのは馬が余っているため、馬を交換しながら走らせることが出来ることだ。


 人を乗せている馬と人を乗せていない馬ならば前者の方が疲れるのは当たり前である。バテた馬と元気な馬を交換しながらローラルナの街を目指した。


 もちろん紫苑は馬を操れない。紫苑が乗っている馬はただロメリアの牝馬を追っているだけである。そうして馬を走らせること数時間。辺りが茜色に染まり始めていた。


 しかし、ロメリアに野宿はさせられない。紫苑はそう考える。となると、泊まれそうな小さな村を探すか、もしくはローラルナの街まで走り抜けるしか選択肢はないのである。


 日が落ちれば夜盗に襲われる確率も高くなる。ただでさえ襲われる確率が高いのだ。確実に襲われると言っても過言ではないだろう。


「少しキツいかも知れんが、このまま走り続けるぞ。悪くないペースで進めている。このまま行けば日没までにはローラルナの街に到着出来る、と思う」

「は、はい」


 どうだと追手に聞く。顔色を悪くした追手はただ頷くばかりだ。どうやら死期が迫っているらしい。仕方のないことである。出血が酷過ぎる。顔が青白くなっていた。もう駄目かもしれない。紫苑はそう思っていた。


 意外と馬に乗るのも体力が要るのだ。鐙が無ければ落ちないように太ももで踏ん張らなければならない。振動も大きい。追手がその衝撃に耐えられるかは、彼次第だ。


 走ること更に数時間。陽は地平線の向こうに隠れ、夕闇が襲い掛かってきた。その時である。遠くに明かりが見えたのは。紫苑は思わず追手の男に声をかける。しかし、返事がない。どうやら事切れてしまったようだ。


「間に合わなかったか」


 紫苑は一人呟く。こうなってしまった以上、抱えていても仕方がない。紫苑は男を道端に放り出した。しかし、そうなると困ったことが発生する。紫苑は馬を操れないのだ。


 もう街が目と鼻の先だというのに、馬を思うように操れない。紫苑は恥を忍んでロメリアに馬の簡単な操作方法を即席で習うことにした。そう、最低限の扱い方がわかれば良いのだ。


「ふふっ」


 ロメリアが笑う。


「何がおかしい?」

「いや、貴方が乗馬ができないと言うのが意外で面白くって。あ、気に障ったのならごめんなさい」


 ロメリアが謝罪する。今、ロメリアが頼れるのは紫苑だけなのだ。そして紫苑の気が変わったらロメリアなぞ、先ほどの男性のようにポイと捨てられてしまうだろう。その危機感は持っていた。


「別に、構やしないさ。事実だからな。出来ないことは出来ないと言う。それがオレの信念だ」


 恥ずかしげもなく述べる紫苑。むしろ、どこか誇ってすら居そうな表情であった。そうしてなんとかローラルナの街に到着したのであった。

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