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4 ティアマトとの出会い


 これが魔王の力の一端か――。


 俺の魔法能力は、圧倒的の一言に尽きた。

 本気とは程遠い、小手調べ程度の小技でさえ、破壊的な威力がある。


「た、助けていただき、ありがとうございました……」


 と、集落の住人らしき魔族が何人か出てきた。


 ……別にこいつらを助けようと思ったわけじゃない。


「降りかかる火の粉を払っただけだ」


 俺はそっけなく言った。


「じゃあな」


 ここに留まる意味もないので、そのまま去っていく。


「あ、あの……」


 集落の住民たちは俺に何か言いたげだったが無視した。


 おおかた、何かお礼をしたい、とかそんなことだろう。

 魔族と深い縁を作るつもりはない。


 そんなことより、これからの方針だ。


 魔王に生まれ変わった、と言われても、まだ頭の中が整理できていない。


 これからどうするか――。


 思案したそのときだった。


「『魔王の魔力』を感知して来てみれば、やはり――」


 ふいに、背後から声が聞こえた。


 俺にまったく気配を感知させず、一人の魔族が出現したのだ。


「誰だ」


 警戒しながら振り返る俺。


 そこには一人の少女が立っていた。


 あまりの美貌に背筋がゾクリと寒くなった。

 長い黒髪とそれを彩る赤い紐飾りが風になびく。

 身に付けているのは上品な黒いゴシックドレスだ。


「ようやく出会えましたね、新たな魔王様」

「……誰だ、お前は」

「先代魔王様の側近を務めておりました。名はティアマト――ティア、とお呼びくださいませ」


 女は俺の前に恭しく跪いた。


「ティア……か」


 俺はもう一度彼女――ティアを見つめる。


 さっき倒した魔族たちとは、魔力の桁が違う。


 S級冒険者でも単独でこいつに勝てる奴は、ほとんどいないかもしれない。


 魔王の側近――か。


「先代魔王ディルダイア様の力が突然消失し、私はその行方を追っていました」


 と、ティア。


「魔王の力が消失する――その理由は二つしかあり得ません。一つは魔王が死去したとき。そしてもう一つは魔王が後継者に力を継承したときです」

「力を継承……」

「今回は後者のようでしたので、私はその行方を追い……そして、あなた様にたどり着いたのです」


 ティアが俺を見つめる。


「どうか御名をお聞かせください、新たな魔王様」

「俺は――」


 一呼吸おいて俺は言った。


 確かディルダイアは俺のことをこう呼んでいた。

 魔王の称号である『ディ』に連なるもの――【ディヴァイン】と。


「ディヴァインだ」

「ディヴァイン様……以後よろしくお願いいたします」


 ティアが俺の前に平伏した。


「先代魔王は俺のことを何か言っていたか? お前は側近なんだから、何か聞いていないか?」

「いえ。そもそもディルダイア様ご自身が突然行方をくらませてしまったので……私は魔王の力のかすかな残滓を追い、ようやくここにたどり着きました」


 と、ティア。


「先代魔王ディルダイアは――私の父です」

「……何?」

「父は、たった一人で私を育ててくれました。行方知れずになった後、居ても経ってもいられず……魔界中を探し回ったのです。そして、ようやく――出会えました」


 ティアの目に涙があった。


 魔族にも――肉親を想う情があるのか。


「恐れながら、質問させていただいてもよろしいでしょうか?」

「許す。申せ」


 俺はできるだけ魔王っぽい話し方になるように演じつつ言った。


「あなた様が父から――先代魔王ディルダイアから魔王の力を受け継いだ理由を、お聞かせください」


 ティアマトの眼光は鋭かった。


「合わせて、父に何があったのかも……」

「父親が心配か」

「当然です」


 ティアが言った。


「たとえば――俺がディルダイアから力を奪ったとしたら、どうする?」

「殺します」


 彼女の答えはゆるぎなかった。


 まっすぐに俺をにらんでいる。


 その瞳には、明確な殺意が宿っていた。

 可憐な美少女の姿をしていても、魔族は魔族だ。


 俺が対応を一つ間違えれば、こいつは俺を殺すために襲い掛かってくるだろうか?


「お前が俺に勝てると思うか?」

「思いません」


 その答えもゆるぎない。


「それでも私は……父の仇を許すわけにはいきません」


 俺とティアの視線がぶつかり合った。


 なるほど、父親が心配だと言った気持ちも、父親を想う気持ち自体にも嘘はなさそうだ。


 魔族にそんな情があるのは少し意外だが――。


「いや、今のはたとえ話だ。混乱させて悪かった」


 俺は素直に謝った。


「そのうえで、最初の質問に答えるとしよう」

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忌み子として処刑された僕は、敵国で最強の黒騎士皇子に転生した。超絶の剣技とチート魔眼で無敵の存在になり、非道な祖国に復讐する。


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