16 S級冒険者VS魔王軍7
「くっ……」
ベティは即座に振り返り、爆炎の魔弾を放った。
だが、そこにティアの姿はいない。
俺から見れば、ベティがまるで見当外れの場所に攻撃魔法を放ったように思える。
が、実際にはこれはティアの幻術の効果だろう。
ベティにとっては、今攻撃を放った『見当外れの場所』にティアがいるように見えているのだ。
S級冒険者ともなれば、精神干渉系の攻撃にもかなりの耐性を持っているはずだが、さすがに上級の夢魔であるティアの幻術はけた外れなんだろう。
「ううっ、地面が歪む――空がねじれる……なんだよ、これえっ!?」
ベティは恐怖の悲鳴を上げる。
「お前はもはや私が作り出した夢幻の世界から逃れられない――」
ティアが冷然と告げる。
「永遠に閉じた世界の中で――お前の精神だけを惑わし、そして破壊してやろう」
俺に接する時の恭しい態度とはまったく違う。
敵を抹殺することしか考えていない、冷徹な魔族の姿――。
「う、うわ……な、なんだこれ、熱い、熱いぃぃっ!?」
と、ベティが悲鳴を上げた。
俺には見えないが、たぶん体を焼かれるような幻覚を感じているんだろう。
「それは幻。けれど、感じる苦しみは本物だ」
ティアが言い放った。
「このまま、お前の心ごと焼き尽くしてやろう」
「ふ……ふざけんなあああああああっ!」
ベティが絶した。
ごうっ!
爆炎の魔力が全身から吹き上がる。
「こんな小細工、効かねえって言ってんだよっ!」
その瞬間、彼女の体が燃え上がった。
自爆――!?
一瞬そう思ったが違う。
彼女の体自体が炎と化している。
「このまま精神を焼き殺されるくらいなら……アタシは人としての形を捨てる!」
ベティがニヤリとする。
「炎の魔神と化して――すべてを焼き払ってやる!」
こいつ、まさか人間としての存在すら捨てて、魔物と化すつもりか!?
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