3 生まれ変わった力
そのためには、まずこの魔界で生き延びなければならない。
そして、封じられた地上への道をこじ開け、ふたたび人間界に戻る必要がある。
――と考えていた、そのときだった。
「あれは――」
前方に火の手が見えた。
どうやら小さな集落のようだ。
さらに、
「ひ、ひいっ……助け……」
「命ばかりは……」
「殺さ……ない……で……」
悲鳴と懇願の声がかすかに聞こえる。
「……別に魔族同士が殺し合おうと、俺の知ったことじゃない」
つぶやく俺。
魔族なんて、俺にとっては等しく憎悪の対象でしかなかった。
俺の故郷を滅ぼした仇敵だ。
と、
「ん、なんだぁ、てめぇ」
頭上から声がした。
いつの間にか、一人の魔族が空中に現れている。
俺の気配を感じ取って、ここまでやって来たのか?
次の瞬間、集落の方向から何体もの魔族が飛んできた。
あっという間に取り囲まれてしまう。
「旅人か? こんな場所に居合わせるとは不運だったな、お前」
「そいつも殺しちまうか?」
「当然だ。金目のものがあればいただく。なけりゃ殺し自体を楽しむ」
「へへ、女だったら別の楽しみもあったんだが……こいつは男か」
魔族たちは楽しげに笑っていた。
全員が等しく暴力の愉悦に酔っている様子だ。
「絵に描いたような外道だな」
俺はニヤリと笑った。
「それでこそ――魔族だ」
「ああ?」
「遠慮なく殺す」
俺は奴らを見据えた。
俺の中に新たな力が宿っている――。
その確信があった。
そして、それは今までとはまったく違う力だ。
今までの俺は『剣士』だった。
でも、今――俺の中に在る力は『魔力』だ。
信じられないほどのすさまじい魔力が体の中を駆け巡っている。
魔法に関しては素人の俺だけど、その使い方は本能が知っていた。
「殺す? 見たところ、弱そうな魔族だな」
「くっくっく、この人数を相手に勝てるつもりかよ?」
二十人以上の荒くれ魔族たちが俺を取り囲んだ。
「弱そう……か」
お前たちには、そう見えるか。
だが、魔族の強さを決めるのは外見じゃない。
内に秘めた魔力だ。
基本的に魔力の強さが、そのまま魔族の強さとなる。
そして、俺の中には――。
無限ともいえる『魔王の魔力』が宿っている。
「――弾けろ」
俺は小さくつぶやいた。
そのとたん、
ばんっ!
奴の全身が爆裂した。
「なっ!?」
その場にいる全員が驚愕の声を上げる。
「俺を殺そうとした以上、当然殺される覚悟もできているんだろう?」
俺は残りの荒くれ魔族に向かって歩みを進めた。
ばんっ!
ぼんっ!
ばしゅぅっ!
俺がにらむたび、荒くれの誰かが爆裂して死ぬ。
「て、てめぇ、何をしてやがる……!?」
「無詠唱の爆裂呪文――この程度で驚いてくれるのか?」
俺は残った連中を見回した。
「くっ……」
「と、とにかく、一斉にかかれ! 同時に全員を攻撃することはできないはずだ!」
魔族の誰かが叫んだ。
「た、確かに!」
「ようし!」
彼らはグルリと俺を半包囲した。
「死ねぇぇぇぇぇぇっ!」
そして同時に向かってくる。
「全員弾けろ」
俺は爆裂魔法を発動させた。
さっきまでのは単体相手のものだが、今度のは【範囲魔法】だ。
目標を指定する必要すらなく、俺の周囲10メートルほどの敵対者をすべて爆殺する。
ばんっ、ばんばんばんばんばんばんっ……!
炸裂音が連続して響き――。
一秒後、そこには残りすべての魔族の死体が横たわっていた。
【読んでくださった方へのお願い】
面白かった、続きが読みたい、と感じた方はブックマークや評価で応援いただけると嬉しいです……!
評価の10ポイントはとても大きいのでぜひお願いします……!
評価の入れ方は、ページ下部にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところにある
☆☆☆☆☆をポチっと押すことで
★★★★★になり評価されます!
未評価の方もお気軽に、ぜひよろしくお願いします~!