4 魔王の内心
思った以上にチョロいな。
俺は内心で呆れていた。
腹の探り合いをしたところで進展はないし、収穫もない。
とはいえ、ティアが俺を疑っているのは確実だ。
俺を心から信頼しているはずもない。
すでに彼女はディルダイアの死に感づいているだろうからな。
ただ――完全な確証は持てていないはず。
なら、チャンスはある。
ティアを、俺の手駒にできるチャンスが。
彼女が前王の死の証拠をつかむ前に、彼女の心を掌握する――。
まずは試しに、と歯の浮くような口説き文句を並べてみたのだが……。
思った以上に効果が出た。
これは望外の幸運だ。
「これからも頼むぞ、ティア。俺に力を貸してくれ」
彼女の瞳をまっすぐ見つめ、唇が触れ合わんばかりに顔を近づける。
そのまま可憐な唇を奪いたい衝動に駆られるが、そこはさすがに我慢した。
一時の欲望に流されていい場面じゃない。
「っ……! ま、魔王様――」
ティアは驚いた顔をして、慌てたように後ずさった。
顔が真っ赤だ。
驚くほど初心な少女だった。
俺は彼女との対話に手ごたえを得て、別れた。
ティアと別れた俺は城内の廊下を歩いていた。
――ティアは半ば以上、俺に落ちたか?
いや、油断は常に禁物だ。
何か一つのきっかけで彼女が敵に回ることはあり得る。
常に――あり得るんだ。
俺がこの魔界で心を許していい相手なんていない。
そう、復讐を成し遂げる日まで――。
お前たち魔族は、等しく俺の手駒だ。
そこに情はない。
と、
「あ、魔王様だ。こんにちは~!」
メルディアが駆け寄ってきた。
金髪を長く伸ばした可愛らしい少女――最近、髑髏の騎士としての姿を全然見ていない。
こいつは……俺に対して好意的な魔族の一人だろう。
その辺りの気持ちを――特に俺に対する忠誠を、あらためて確かめておくか。
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