3 ティアの内心
「あなたが父の意志を継いで、新たな魔王様として動いてくださること……前王の娘として嬉しく思います、ディヴァイン様」
ティアマトは恭しく言った。
もちろん、それはディヴァインが父の死に無関係だとしたら、の話である。
彼が父の死に関係がある――いや、父に直接手を下した『犯人』であれば、ティアマトは決して彼を許さない。
どんな手を使ってでも、必ず父の無念を晴らしてみせる。
だが、今は……まだ真相の全てが闇の中だ。
最初は封印されていたと思っていた父が、実際には殺されているのではないかと疑念を抱いたのは、彼が新たな魔王になってすぐのことだ。
それからティアマトは独自に調査を進め――残念ながら、父はおそらく殺されているだろう、と結論付けた。
ならば、その犯人はおそらくディヴァインだ。
彼が父を殺し、その力の全てを奪ったのだろう。
あるいは前王を生かしておいては、後々自分の権力が削がれるかもしれないと懸念したのかもしれない。
「そうだな。俺は前王ディルダイアの意志を叶えるためにも、魔王として進んでいかなければならない。引き続き、俺に力を貸してくれ」
「御意」
言いながら、ティアマトは『しらじらしい』と心の中で吐き捨てていた。
「お前がいてくれてよかったよ」
ふいにディヴァインが微笑む。
「えっ……?」
「突然魔王になった俺には味方が少ない。いや、味方になった者も、その内心は分からない」
ふいに吐露されたのは、初めて知る彼の弱さだった。
「ディヴァイン……様……?」
突然のことにティアマトは戸惑った。
「はは、たまには弱音を吐かせてくれ」
ディヴァインが苦笑した。
「信頼する副官の前でなら……いいだろう? 駄目か?」
「い、いえ……」
ティアマトは戸惑いながらも、首を左右に振った。
「私で良ければ……いくらでもお聞きします」
彼はなぜ急に自分の弱みを見せたのだろう?
私のことを警戒しているのではなかったのか?
(――いや、確実に警戒されているはずだ。なのに、なぜだ)
「俺は不安なんだ。いまだ勢力基盤を築けたわけではなく、集まった配下の数もまだまだ少ない。俺自身の力だけで常に局面を打開できるわけでもない。個人の力には限度があるからな」
ディヴァインが続ける。
「だからこそ、俺は仲間を欲している。信頼できる仲間を、だ。そして俺にとって最も信頼できる仲間になってほしいのが――」
彼の瞳がまっすぐにティアマトを見つめる。
「お前なんだ、ティア」
「ディヴァイン……様……?」
どくん、どくん、と心臓が高鳴る。
なぜ私は、この男からの言葉に胸を甘く疼かせているのだろう?
戸惑いは加速し続ける――。
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