2 ティアとディナーデート
「わー! すごい! 私、前からここに行きたかったんですよ!」
ティアが目を輝かせた。
お前……キャラ変わってないか?
「うふふふふ、ありがとうございます。ディヴァイン様」
「……喜んでもらえて何より」
「あ……す、すみません、私、つい……はしゃいでしまって」
ティアが恥ずかしそうにはにかんだ。
そうしていると、普通の女の子にしか見えない。
つい和みそうになる気持ちを、俺はすぐに引き締めた。
こいつは――油断できる相手じゃないし、気を許していい相手でもない。
「? ディヴァイン様、目が笑ってないですよ?」
ティアがキョトンとした顔になった。
「せっかくのお食事会ですし、一緒に楽しみましょう」
楽しむ、か。
随分と余裕みたいだけど、その裏に隠された真意はなんだ?
こいつは今も、俺を父殺しだと疑っているはず――。
俺の警戒をよそに食事会が始まった。
俺たちの前にズラリと豪華なメニューが並ぶ。
肉も、野菜も、そして調理もすべてが一流。
漂う香りが空腹感を刺激し、早く食べたいという気持ちを加速させる。
「いただきます」
俺とティアは食事を始めた。
……うん、めちゃくちゃ美味い。
「! 美味しいです~!」
ティアは幸せそうな顔をしていた。
「お前にはいつも世話になっているからな。せめてもの礼だ」
「いえ、自分の職務を果たしているだけですから」
微笑みつつ、また別のメニューを口に入れるティア。
けっこう食うんだな……。
「あ……す、すみません。食べ過ぎですよね」
「遠慮するな、と言っている。お前が好きなだけ食べてくれ」
俺は微笑んだ。
「魔王様も、ぜひ。どんどん食べてください」
ティアがにっこりと言った。
「美味しいですよ」
「ああ、日ごろの疲れが吹き飛ぶようだ」
「魔界を背負っていますからね、ディヴァイン様は」
ティアがしみじみと言った。
「お前の父から託されたからな」
言って、俺はティアを見つめる。
「……!」
彼女の表情がわずかに変わった。
やはり父親の話題になると反応が変わるな。
さっきまでの笑顔が消え、明らかに表情がこわばっている――。
※
SIDE ティア
(なんだ、こいつ――私を試しているのか?)
ティアマトは魔王ディヴァインを見据えた。
食事ではしゃいで見せたのは、もちろん演技である。
……素が混じっていないと言えばウソになるが。
少しでも相手の油断や気の緩みを誘うことができれば、それでよし。
別に油断を引き出せなくても、特にマイナスがあるわけではない。
そうやって、機を見て、こちらから核心的な質問をできれば……と思っていたら、向こうが先に急所を突いてきた。
「ディヴァイン……様」
ティアマトの表情が自然とこわばっていく。
父のことをわざわざ持ち出した意図は何か?
単なる雑談の一環か?
いや、おそらく違う。
魔王は――ティアマトが彼のことを疑っていると気づいているだろう。
だから、彼女もことさらに『魔王に疑念を抱いている』ことを隠すつもりはない。
「どうした、ティア? 俺は何か気に障ることを言ったか?」
魔王がたずねる。
彼女を見つめる瞳には暗く重い……彼女には分からない何らかの情念が宿っている気がした。
「……気のせいでしょう。私は、今日の会を楽しんでおります」
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