6 ティアマトの迷い2
「魔王様に報告した方がいいかなぁ、これ」
「っ……!」
からかうようなメルディアの言葉に、ティアマトは表情をこわばらせた。
彼女がディヴァインを疑っていることを、本人には知られたくなかった。
表面上は忠臣を装いつつ、裏でディヴァインのことを調べる……という形がベストだ。
といっても、向こうもすでに感づいているかもしれないが――。
「あっははは、冗談だよ。じょーだん。ボクがそんな意地悪なことするわけないじゃん」
メルディアが笑った。
「……今のは私の失言だった。黙っていてくれるなら非常に助かる」
ティアマトは彼女に一礼する。
「恩に着る、メルディア」
「いいよ~」
※
「ティアに疑われているのか……まあ、それもそうだな」
俺は二人の会話をもう一度思い起こしつつ苦笑した。
彼女たちは俺に聞かれていないと思っていたようだが、この城にはいたるところに監視用の魔導具を設置してある。
その魔導具は俺の――つまり魔王級の魔力で隠蔽されており、ティアたちでさえ、見つけるのは困難だろう。
「俺が先代を殺したことを知れば、ティアは俺を許さないだろう。あるいは俺を殺そうとするかもしれない」
いや、きっとするだろう。
もともとティアが俺に忠誠を誓っているのも、結局のところは彼女の父――先代魔王ディルダイアの死因を調べるため、という理由が大きいのかもしれない。
先ほどの会話を聞いて、俺はそう考えた。
とはいえ、それがすべてではなく、ティアはティアなりに魔界の行く末を案じているのだと思う。
だから、俺が魔界の情勢を安定させ、魔王としての基盤を築くために戦う限り、彼女は俺に協力してくれるだろう。
俺にとっては、その後にS級冒険者たちに復讐するために地上に侵攻することこそが『本番』なわけだが、それについても魔界の利益を損なわない限りは俺に敵対しないはずだ。
「なら、問題はない――」
俺がディルダイアを殺した証拠など、出てくるとは思えない。
すべては奴が作り上げた異空間で起きた出来事。
そこには俺とディルダイアしかいなかったし、完全な密室で起こっている以上、証拠をつかむことはできないだろう。
「当面は泳がせておけばいいか……」
それが俺の結論だった。
ただ、彼女への接し方は一層気を付けなければならない――。
「結界魔術師アイゼラを魔王様の配下に加えるべきだと考えます」
翌日、ティアがそう進言してきた。
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