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13 S級冒険者たちの今2

「ライシャムが行方不明? それは本当なのですか、バッツ翁」


 驚いてたずねるオリヴィア。


「残念ながら、な。ライシャムほどの者が敗れたとしたら、魔界にはまだ恐るべき猛者が控えていることになる。あるいは――魔王に匹敵するほどの魔族が、な」

「魔王に匹敵……」


 オリヴィアがうなった。


「魔界への扉は閉じたんでしょう? ライシャムさんはどうやって魔界に行ったんですか?」


 S級の一人がたずねた。


「ああ。いちおう儀式魔法を使って魔界の扉の封印を一時的に解くことはできるんだ」


 説明するソル。


「それなりに手間のかかる儀式で、気軽に魔界に行くことはできないが――ライシャムには魔界の現状や魔王ディルダイアに変わる新たな魔王が現れていないかどうか、そして魔王軍が再編されているかどうか……などの偵察をお願いしていた」

「偵察……」

「強力な魔族に遭遇したときのことを考え、【天使兵器】まで持たせたんだけど……まさか帰ってこないとはね」

「……でも、人間界と魔界は基本的に行き来できないわけでしょう? こっちから向こうへは儀式魔法を使って行けなくはないけど、向こうからこっちは不可能――」

「ああ。だから、仮に魔界に新たな勢力が台頭していても、人間界が脅威にさらされることはないだろう」


 と、ソル。


「とはいえ、それは『現時点』での話。たとえば数十年後、あるいは数百年後――両世界の扉の封印が緩み、新たな魔界の軍勢が攻め入ってこないとも限らない」

「後の憂いは、今絶つ方がいい――と?」

「俺はそう思う。みんなの意見を聞きたい」


 ソルがぐるりと周囲を見回す。


 ――が、活発な意見は出てこなかった。


 とりあえずは相手の戦力を削りつつ、各国の戦力を充実させ、危急の事態に備える……という通り一辺倒の結論になった。


 もっと積極的に魔界への調査なり偵察なりをする……という考えもあるが、誰もそれを言い出さない。


 オリヴィアにはなんとなくその理由が分かった。


 今さら誰もリスクを犯したくないのだ。


 せっかく世界の英雄という地位を築いたのに。


 今後は何もしなくても地位も名誉も富も勝手に入ってくるだろう。


 あとは幸せな人生を送るだけ。


 そんな究極の『勝ち組』の状況で、なぜわざわざ危険を冒す必要があるのか――。


「……と、そろそろ時間ですね。僕は失礼しますよ」


 と、背を向けるザイン。


「あら、もう行ってしまうの? 久しぶりに会えたのに」


 オリヴィアは寂しい気持ちでため息をついた。


「ええ、あいにくですが、これからゼルフィール王国に向かいますので」

「ゼルフィールに?」

「領地を与えられるそうですよ。ゼルフィール王から」


 ザインが微笑んだ。


「えっ、領主になるってこと?」

「僕だけでなくS級冒険者全員に各国が領地を与えることを検討しているとか」

「魔王を封じ、魔界の扉を閉じた功績らしい」


 ソルが言った。


「ま、俺には興味がないことだが……」

「ワシは嬉しいぞ。立身出世は男の本懐だ」


 老騎士バッツが相好を崩す。


「我々は厳しい戦いを生き延びたのだ。それに見合う栄誉を得てもいい。富や名声を得てもいい。幸せで穏やかな時間を過ごしてもいい」

「そうですね。仲間たちがそれぞれ幸せに暮らせるなら、俺も嬉しく思います」

「君もだよ、ソル。これからは幸せになるんだ。オリヴィアとの仲も、いい加減にもう少し進めんか?」

「うっ」


 普段はクールなソルがたじろぐ。


「いや、これは余計な一言だったか。年を取ると、どうもお節介になってしまってな……許せ」

「いえ、ご忠告は肝に銘じます」


 一礼するソル。


「それぞれが領主になって、世界も平和になって……めでたしめでたしというところね」


 オリヴィアが微笑んだ。


 そして私はソルと幸せな結婚を――。


 彼女の夢想はどこまでも広がっていく。


 これから先、きっと最高の人生が待ち受けているだろう。


 なんといっても魔界の脅威を退け、この世界を救ったのだ。


 自分たちは最高の人生を享受する資格がある――。

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忌み子として処刑された僕は、敵国で最強の黒騎士皇子に転生した。超絶の剣技とチート魔眼で無敵の存在になり、非道な祖国に復讐する。


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