9 魔王の真価1
それは、とっさの思い付きだった。
「そうだ、相手が斬撃で来るなら、俺も――」
魔法を発動する。
俺が得意とする高火力広範囲破壊魔法【冥帝黒導波】。
ただし、普段は『光線』の形で放つそれを、『斬撃』のように収束して撃ち出す――。
「【冥帝光刃波】!」
俺が放った斬撃型の魔力波が、奴の『爪』と空中でぶつかり合う。
ざんっ……!
威力で勝ったのは、俺の方だった。
黄金の竜気はあっさりと斬り散らされ、なおも威力を減じない俺の斬撃波が奴に向かっていく。
「なんだと――」
驚くガーンドゥの胴体部に俺の斬撃波が命中する。
「がはっ……!?」
鮮血がしぶき、胸元を大きく切り裂かれたガーンドゥは倒れ伏した。
「なんという威力だ――」
たった一撃で勝負はついていた。
ガーンドゥは突っ伏したまま起き上がることができないようだ。
「この我が一撃でこのザマとは……」
「いや、俺も驚いた。想定以上の威力だ」
魔法を『収束』するというのは、これだけ威力を高めるものなのか。
ただ、その分、攻撃範囲が狭まるから避けられやすく、一長一短ではある。
たぶん、使い分けが大事なんだろうな……。
「命に別状はなさそうだな。さすがの生命力だ、ガーンドゥ」
「だが、しばらくは戦闘不能だ。竜の回復力をもってしても、お前の一撃で受けた傷はすぐには再生できん……」
ガーンドゥがうめく。
「……認めよう。我の負けだ」
「潔いな」
俺はニヤリと笑った。
「ますます気に入ったぞ。そして、もう一度言おう。俺の配下になれ、ガーンドゥ」
「我は他者に屈することはせぬ。たとえ力で打ちのめされても、誇りまでは渡さん」
力勝負で勝てば、すぐに服従してくれる――というわけではなさそうだ。
とはいえ、これほどの強者だ。
ぜひ魔王軍の陣営に加えたい。
S級冒険者たちとの戦いでも、大いに働いてくれそうだからな。
「そうだな……では、『配下』ではなく『同志』あるいは『仲間』ならどうだ?」
俺は提案してみた。
「ほう?」
「俺にとって人間界のS級冒険者たちは宿敵だ。奴らを倒すため、強い味方を探している」
俺はガーンドゥに語る。
「先日、奴らの一人が俺の領内に攻めこんできた。返り討ちにしたが、奴らは手ごわいし、俺の留守を狙われる場合もある。ゆえに、俺には強者が必要だ。一人でも多く――」
実際、ライシャムを倒したとはいえ、奴らはまだ22人もいる。
俺一人では相手をする人数にも限界があるし、多勢に無勢というケースだって十分にありうる。
ガーンドゥは味方として、ぜひ欲しい人材だった。
「お前にとって利点があるということは分かった。だが、我にとってお前に味方をする利点があるのか?」
ガーンドゥが俺を見据える。
単なる獣ではない、深い知性を感じさせる深い瞳――。
「ない」
俺は即答した。
「ほう?」
逆にガーンドゥは興味を覚えた様子だ。
「お前の返事もなかなか潔いな」
わずかに苦笑している。
「だから教えてほしい。お前にとっての望みを。それを俺が叶えたら、お前は味方になってくれるか?」
俺が一歩踏み出す。
「我の望みか……」
うなるガーンドゥ。
「我の望みは、我を含む四体の最上位魔獣の頂点に立つこと――」
その口ぶりからすると、魔界にはガーンドゥと同格の魔獣が全部で四体いるということか……?
「お前が魔王なら、我は魔獣王を目指している」
と、ガーンドゥ。
「なら俺はお前の野望に手を貸そう」
俺は彼に言った。
「その代わり、お前も俺の望みに手を貸してくれ」
「S級冒険者たちとの一戦か?」
「そういうことだ。持ちつ持たれつ……主と配下ではなく、対等な同盟。これならどうだ?」
俺は彼に提案した。
「……ふむ」
ガーンドゥがうなる。
「いいだろう」
返事は了承だった。
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