5 建築職人ギルド
「建築職人ギルドの長、ジョウビルと申します」
アリアンロッドの案内で、俺は建築職人が集う区画に行き、そこのギルド長と面会することができた。
ジョウビルと名乗った魔族は、虫をベースとした種族のようで、外見としてはカブトムシによく似ている。
ただし、大きさは人間ほどもあるが。
「新たな魔王となったディヴァインだ。会えて嬉しいぞ、ジョウビル」
俺は油断なく彼を見据えた。
魔界は基本的に『力がすべて』の世界だ。
魔王に対してこいつが向ける視線も、純粋な敬意や忠誠じゃない。
俺を値踏みするような光が混じっていた。
『新しい魔王は前の魔王と比べ、有能なのか?』
『自分たちに利益をもたらしてくれるのか?』
もともと腹の探り合いが得意というわけじゃない俺でも、そんな打算を感じ取ってしまうほどに露骨な視線だった。
とはいえ、それが魔界では当たり前のことなんだろう。
だから俺は表情をいっさい崩すことなく、ジョウビルの視線を真っ向から受け止めた。
「新たな魔王様……ですか。されど、魔王ディルダイア様から、そのような話は聞いておりませんな」
ジョウビルがうなった。
虫の表情は分かりづらいが、おそらく俺に疑念を抱いているんだろう。
「俺は魔王として認めない、と?」
視線に力を籠め、わずかに『圧』をかけてみた。
「……!」
少したじろぎつつも、ジョウビルは退かない。
「あなたが正式に魔王の座を受け継いだ方なのか、それとも力で奪い取ったのか、はたまた魔王を名乗っているだけの大逆の徒なのか――私には判断できかねます」
「それはさすがに無礼ではないか、ギルド長」
アリアンロッドが横から割って入った。
「アリアンロッド殿はこの方を魔王様として認めているのですか?」
「ああ」
ジョウビルの問いにうなずくアリアンロッド。
「この方の考えも聞いたし、実際に手合わせもした。武人として……そして一人の魔族として、この方を主として仕えたいと感じた」
「ほう……」
ジョウビルは俺を値踏みするように見る。
「ただ、それはアリアンロッドの意見だ。お前にはお前の考えがあるし、お前の見立てがあるだろう」
俺はジョウビルに言った。
「だから、そちらから条件を出してくれ」
と、提案する。
ジョウビルの全身がピクリと震えた。
「条件、と仰いますと?」
「ここは力がすべての世界だろう。俺が魔王にふさわしい力を示せば、お前たちの納得を得られるのではないか?」
「……ふむ」
ジョウビルがうなる。
「あなた様の強大な魔力はこうしているだけで伝わってきます。正直申し上げて、力ずくでこられたら、我々は一瞬で滅ぼされるでしょう」
「魔王様はそんなことはしない」
アリアンロッドがムッとした顔になった。
「あくまでも力関係の話です」
と、ジョウビル。
「ただ、あなた様はそうしようとしない。あくまでも話し合いで我らを従えたいということですかな?」
「力で従えたところで、職人の本当に魂がこもった技術は手に入らないだろう?」
俺はニヤリと笑った。
実際、それは魔族でも人間でも変わらないと思う。
だから俺は強硬に出るつもりはなかった。
納得ずくで力を借りたかった。
「ならば、我らの都市を脅かす魔獣を打ち倒していただきたい」
ジョウビルが切り出した。
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