4 職人都市へ
「話が一段落したところで――そろそろ服を着たらどうだ、ティア?」
俺は彼女からわずかに視線を逸らした。
絶世の美女であるティアが一糸まとわぬ姿で目の前にたたずんでいるのは、さすがに意識せざるを得ない。
とはいえ、ドギマギしている姿をあからさまに見せては、魔王としての威厳にかかわる。
「その姿は少々目の毒だ」
俺は可能な限り泰然とした態度を崩さずに、ティアに着衣を促した。
「っ……! も、申し訳ございません」
ティアは顔を赤くしてうつむいた。
そそくさと足元に下ろした黒衣をふたたび身に着けていく。
初心な反応が微笑ましい。
「――失礼いたしました」
ほどなくして着衣を終えたティアが一礼した。
「では、さっきの話に戻ろう。魔王城の修復のために――その依頼のため、職人都市に向かおうと思う。俺がここを離れる間のことを打ち合わせたいから、メルディアとアリアンロッドを呼んでくれ」
「承知しました、魔王様」
俺の命にティアがうなずいた。
というわけで、俺の元にメルディアとアリアンロッドがやって来た。
さっそく今後の予定を伝える。
「職人都市に行くの? じゃあ、ボクも行きたい~!」
「あたしにもお手伝いさせてください、魔王様」
メルディアとアリアンロッドが口々に言った。
「全員を連れて行くわけにはいかない。ティアに留守を預かってもらう予定だが、その補佐をどちらかにやってもらい、もう一人は俺についてきてもらう」
「あたしは職人都市に顔が効きますよ、魔王様」
と、アリアンロッド。
「あたしの着ている鎧もそこで作ってもらいましたから」
「ああ、魔界最高の鍛冶師が作った鎧だって言っていたな」
俺はアリアンロッドと初めて会ったときのことを思い出す。
「あの都市の職人は気難しく、よそ者を好みません。たとえ魔王様といえど、簡単には言うことを聞かせられないでしょう」
アリアンロッドが身を乗り出す。
「かといって、力で強制すれば、彼らは死を選びます。命よりも己の凶事や技術を大切にする者たちですから」
「死なれては困るな。大事な人材たちだ」
俺はうなずいた。
「分かった。今回はアリアンロッドに同行してもらう。メルディア、お前はティアとともに城で待機し、何かあれば俺に連絡を」
アリアンロッドに人馬形態に変身したアリアンロッドにまたがり、俺は職人街に出向いた。
さすがに彼女のスピードは速く、一時間足らずで目的地にたどりつく。
そこでアリアンロッドに人馬形態を解かせ、俺は彼女とともに職人街に出向いた。
「ここが職人たちの町です。鍛冶や建築など職能ごとに区画が違います」
「建築が最優先だが、鍛冶職人ともいずれは懇意にしておきたいな」
俺はアリアンロッドに言った。
「兵たちの武装をよりよいものにそろえたい。来たるべき戦いに備えて――」
そう、俺は遠からずS級冒険者たちに戦いを仕掛ける。
奴らの戦闘能力は絶大だし、それに加え、S級の中には大きな権力を持っている者もいる。
そういった奴らは強力な私兵団を形成しており、その戦力は下手な国家をはるかに凌ぐと言われている。
奴らとの戦いは――『個対個』にとどまらず『戦争』になるのだ。
だから、こちらの兵力の増強や底上げは必須だった。
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