3 ティアの真意
「これから話すことは重大な不敬となりましょう。ですから、魔王様のご判断んでいつでも私を処刑してくださって構いません」
するり……。
ティアは黒いドレスを脱ぎ捨て、一糸まとわぬ裸身をさらした。
さすがに恥ずかしそうに頬を染めているものの、胸も股も隠さず、キッとした顔で俺をにらんでいる。
「武器を帯びていない。抵抗もしない。いつでも好きにしろという意思表示か、それは?」
「左様です」
恭しくうなずき、ティアは話を続ける。
「あなたは先代魔王ディルダイアから力を譲り受けたとおっしゃいました。そして先代は人間たちの力で封印されていると」
「ああ。それを解くのも俺の目的の一つだ」
「では、先代は――父はどこに封印されているのです?」
「俺にも分からない」
俺は平然とした態度を崩さず、言った。
「何しろ探知できないからな。封印地点は神の力によって、あらゆる魔の力が拒絶されている。探知魔法も含めて、な」
「では、あなたの言葉が真実だという証拠はありませんね」
ティアの眼光が鋭くなる。
「ないな」
俺は彼女の視線を受け止め、うなずいた。
「信じられなければ、別に構わん。俺の元を去ってもいいぞ? ただし向かってくるなら、俺も力でもって対処する必要がある」
「立ち向かったところで、私程度の力では殺されるだけでしょう。ただし――あなたが父に何か危害を加えた場合、その覚悟で立ち向かいます」
ティアは全裸のまま俺をにらみつける。
「俺はお前の父から力を譲り受けた。そして、未だ封印されているお前の父をいずれ解放したいと考えている。俺から言えるのは、その二つだけだ」
「証拠はないが信じろ、ということですね?」
「信じるなら、俺についてきてほしい。信じられないなら、去ればいい。強制はしない」
俺はティアに言った。
実際、彼女は魔法能力においても事務処理能力においても有能だ。
できれば残ってほしい――というか、是が非にも残ってほしい人材だった。
だが、強制的に従わせても、彼女は真の力を発揮してくれないだろう。
結局のところ、ティア自身に選ばせるしかないのだ。
俺に従うか、俺から去るか――。
「確証がない以上、あなたを信じることはできません」
ティアが言った。
「なら、去るか」
「……いえ」
俺の言葉にティアは首を左右に振る。
「確証がない以上、あなたを信じないという選択肢も取れません。ですから、父について真実が判明するまでは――あなた様の元で働きたいと思っています」
逆に言えば――。
真実が判明したとき、こいつは確実に俺の敵に回るだろう。
ただ、それまでは俺にとって忠実な部下であり、有能な手駒でいてくれるということだ。
「ティア、何度も言うが……俺にはお前が必要だ」
俺はティアを見つめた。
「あらためて、よろしく頼む」
今後も、ティアとは腹の探り合いになりそうだ。
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