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3 生贄にされた俺、魔王に転生する3

旧1話の改稿版、後編です!


※書いているうちに展開が自分の中でしっくりこなくなり、序章以降を書き直しました。新たなものに差替えさせていただきます。

すでに既読の方には混乱を招きかねず申し訳ありませんが、何卒よろしくお願いいたします<m(__)m>

「何……?」


 俺はディルダイアをにらんだ。


「君を救いたいと考えているのだ」

「救いたい? 邪悪な魔王が何を言っている――」


 俺は憤った。


 こいつは世界中を恐怖に陥れた魔族の王だ。

 そんな奴が『俺を救いたい』だと……!?


「邪悪な魔王、か」


 ディルダイアが嘲笑する。


「本当に邪悪なのは、君たち人間の方ではないのか?」

「何――?」

「見るがいい。君の仲間たちの仕打ちを」


 その言葉とともに、俺の前方にある景色が映し出された。


「これは――」


 ごくりと喉を鳴らす。


 俺の故郷である『コレット村』だ。




 その村が――今、炎に包まれていた。




「な、なんで……!?」


 俺は呆然となる。

 あちこちの建物が燃え盛り、村人たちは次々に斬り殺されていく。


「や、やめろ!」


 俺は思わず叫んだ。


 村人を惨殺しているのは数人の集団だった。


 魔族じゃない。

 炎の照り返しを受けた、その顔は――。


「ソルにオリヴィア、ザイン……あいつら……!」


 そう、S級冒険者たちだ。

 全部で十二、三人――S級の半分くらいがいるようだ。


 彼らはその超絶戦闘力をいかんなく発揮し、村人たちを次々に殺していく。


 容赦なく。

 誰一人逃がすことなく。

 命乞いも意に介さず。


 ひたすら、殺し続けている。


「やめろ……やめろよ……」


 俺はがくりと膝を落とした。


「証拠の隠滅、といったところか」


 魔王が淡々と説明した。


「彼らはお前を犠牲にして魔界と我の封印を完成させた。正義の英雄が仲間を捨て駒にした……などと世間に知られれば、彼らの名声は地に落ちるだろう」

「だから……俺に関係する者を全部消すっていうのか……馬鹿な!」

「あの妹も、もしかしたらお前の死に不信をもって調べ始めるかもしれんからな」

「そんな――」

「念には念を入れて、ということだろう。くくく、人間もなかなか邪悪ではないか」


 S級冒険者の一人が剣を振り上げた。


 ちょうど影になっていて、顔が見えない。

 背中を向けているせいで体型もよく分からず、男か女かすら不明だ。


 ぶんっ……!


 剣が振り下ろされる。


 無慈悲に。

 容赦なく。


「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉっ!」


 絶叫する俺の前で――。


 映像の中の妹は、S級の一人に首を刎ねられて即死した。




 ごろん。


 妹の生首が地面を転がる。


 あの可愛らしかったレイの顔が恐怖に歪んで、すさまじい形相になっていた。


「なんで……こんなことに……」


 俺は泣いていた。」

 嗚咽が止まらなかった。


「レイ……俺のせいで……村のみんなも……」


 無力感と絶望感は消えることがなかった。


 俺がいなければ、村がこんな目に遭うことはなかった。

 俺がいなければ、妹が無残に殺されることはなかった。


 だけど、あいつらがここまでするとは――。


 世界の愛と平和を守る英雄、S級冒険者と称えられた奴らが……。


「憎いか、奴らが?」


 魔王が語り掛ける。


「我も同じだ。我を封じ、我が故郷を封じこめたやつらが憎い。だが我はもはや無力だ。力を振るうことができん……しかし、君は違う」

「……何?」

「今、我と君の意識はつながり、『力』の受け渡しが可能な状態だ」


 ディルダイアが言った。


「我の魔力をもってしても、あと数分しかもたない……だが、この瞬間だけは」

「『力』の受け渡し……」


 俺はごくりと喉を鳴らした。


「お前の――魔王の力を、俺が受け継ぐっていうのか」

「魔王の力をもってすれば、死者の復活さえ可能だ」


 魔王が告げた。


「っ……!?」


 その言葉は、俺の中を電流のように貫いた。


 死者の、復活。

 つまり、妹を救える可能性が……ある?


「君が真の魔王になれば――さあ、決断しろ」


 魔王は冷ややかに言った。


「先ほども言った通り、時間はわずかしかない」

「――いや、時間はいらない」


 俺は魔王をにらんだ。


「俺に渡せ。お前の力を」


 妹を救うために。

 奴らに復讐するために。


 そのためなら、俺は魔王にだってなってやる――!


「では、幸運を祈るぞ。新たな魔王」


 ディルダイアは、かすかに笑ったようだ。


「さしずめ魔王としての名は『ディヴァイン』とでも言ったところか。『魔王(ディ)』の称号は今より君のものだ――」

「ぐっ……おおおおおおおおおおおおおおおおお……あああああああああああああああああああああっ!?」


 次の瞬間、すさまじい灼熱感が俺の全身を包みこんだ。




「はあ、はあ、はあ……」


 ようやく灼熱感が消えたのは、数時間も過ぎたころだった。


 ……いや、実際には数秒のことだったのかもしれない。


 体の感覚が変わっている。

 俺は……本当に魔族になったのか?


 両手を見下ろす。

 人間のときと、ほとんど変わらないように見えるが……?


「違うな」


 ディルダイアの声がした。


「見るがいい」


 しゅんっ……。


 前方に姿見が現れる。


 そこに映っているのは、今までとまるで変わらない俺の姿――。


 いや、これは――。


 ず……ずずず……。


 俺の全身を禍々しい黒衣と黄金の装身具が覆っていく。

 さらに頭部からは角が、背中からは翼が、腰からは尾が生えてくる。


「これが、俺の――」


 魔族としての姿か。


 フッと力を抜くと、角や翼、尾は引っこんだ。

 どうやら『人間形態』と『魔族形態』は自由に切り替えられるようだ。


「もう人間じゃないんだ……」


 自分が人間から魔族になったことを、俺は思った以上に冷静に受け止めていた。


「まあ、自分で望んでそうなったんだ。今さら動揺しても仕方ない」


 それにしても、人間ではなくなってしまったことに、まったく感慨がなかった。


 必要な儀式を済ませた――。


 そんな義務的とすら言える感覚しかなかった。


「君には我の力の七割程度を受け渡した」


 と、ディルダイア。


「いずれ我を解放してほしい」

「なるほど、お前にとっても利益がある話か」

「当然だ。何の見返りもなく力を渡したりはしない」


 ディルダイアが言った。


「七割か……」


 ふと、考える。


 力の受け渡しはこいつから一方的に行ったことだ。


 つまり――ディルダイアがその気になれば、いつでも俺から力を取り上げることも可能だろう。


 それは俺にとって、大きな弱点となる。

 俺の生殺与奪の権は、半ばこいつに握られている――!


「……ディルダイア」


 俺は彼に語り掛けた。


「なんだ?」

「七割といわず――九割まで渡してくれないか?」


 俺は思い切って交渉することにした。


「九割……?」

「どのみち、お前は封印されて動けないんだろう? 力を保持していたところで無意味じゃないか?」


 俺はディルダイアに言った。


「なら、俺に限界まで力の譲渡をしてほしい。その力で持って俺は奴らに立ち向かい、お前の封印を解く方法を見つけてみせる。もちろん俺自身の目的――奴らへの復讐も同時に果たすが、そこは了承してくれるな?」

「君が自分の目的を達するのは構わない。好きにしてくれていい」


 と、ディルダイア。


「最終的に我の封印を解いてくれさえすれば、その過程は問わない」

「了解した。なら、後はさっきの俺の提案についてだ。考えてくれないか?」


 沈黙が、流れた。

 簡単に判断できることではない、か。


「……いいだろう。確かに、今後の魔界を君に託す以上、限界まで力を渡した方がいいだろう。とはいえ、我も消滅するわけにはいかないから最低限の力は残させてもらうぞ」

「もちろんだ。理解してくれて感謝する、魔界の王」

「頼むぞ、人間よ」


 ごうっ……!


 俺の中に新たな力の奔流が入ってくる。

 さらに自分の力が増すのが分かった。


「くくく、いいぞ……!」


 俺は思わずほくそ笑む。


 力が欲しい。

 奴らに復讐するための力が。


 そして――それだけじゃない。


「やはり、安心して今後の復讐を遂行したい。悪いが、お前には犠牲になってもらおうか」


 俺は口の端を吊り上げた。




「お前は、ここで死ね」




 目の前の魔王に向かって右手を突き出す。


 ヴ……ンッ!


 俺に渡された魔王の力が――膨大な魔力が、そこに集まっていく。


「っ……!? ま、待て――」

「お前はいつでも俺から力を取り戻せるんじゃないのか? 俺が魔界を治め、お前を解放したら、その瞬間にすべての力がお前に戻る……そして俺は無力になる……」


 俺はディルダイアをにらんだ。


「お前が描いているのは、大方そんなシナリオだろう」

「ち、違う。我は本当に――」

「魔王の言葉を、人間の俺が信じると思うか?」


 しゅおおおおお……んっ。


 俺の右手にはすべての力が集まっていた。


「お前に生殺与奪の権利を握らせておくほど、俺は甘くない――消えろ」




 ごうっ!




 力を一気に放出する。

 放たれた黒紫色の光線がディルダイアを飲みこみ、


「ぐあああああ……お、おのれ……おのれぇぇぇぇぇ……っ……」


 完全に消滅させた。


 あまりにも呆気ない魔王の最期だった。


「いや、違うな。奴はもう魔王じゃない。これからは――」


 俺はニヤリと笑う。


「俺こそが魔王ディヴァインだ」




 ヴンッ……。




 次の瞬間、周囲の景色が突然切り替わった。


 さっきまでの真っ白い空間じゃない。

 深い森の中のようだ。


「ここは、どこだ……?」


 戸惑いながら周囲を見回す。


 空気がやけに重く、澱んでいるように感じる。


 まるで肌にまとわりつくような不快な空気。

 少なくとも、今まで俺が暮らしていた場所とはまったく違う感じだった。


 しかも、異変はそれだけじゃない。


 空を見上げてハッとなった。


「あれは――」


 薄暗い空。


 血のように赤い月。


 遠くからは怪物の雄たけびのようなものが聞こえてきた。


 そして何よりも――肌にまとわりつく、この澱んだ空気は……瘴気だ。


 俺は直感的に理解した。


 ここがどこなのか。

 俺が今いる場所がなんなのか。


「ここは――」


 呆然とうめく。


 ディルダイアを殺したことで、あの空間に何らかの影響があったのか。

 俺はこんな場所まで『転移』してきたらしい。


 そう、ここは――。


「魔族の、世界だ」

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忌み子として処刑された僕は、敵国で最強の黒騎士皇子に転生した。超絶の剣技とチート魔眼で無敵の存在になり、非道な祖国に復讐する。


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