8 魔王の力を見せつける
俺はあらためて魔王城を見た。
「派手にやられたな……」
一階は大部分が、二階も一部分が残っているが、残りはほとんど吹き飛んでいる。
幹部であるメルディアやアリアンロッドは上階にいた可能性が高いから、一緒に吹き飛ばされたかもしれない。
「……あの二人は優秀な手駒になりそうだったんだがな。もし消滅したなら……惜しいことをした」
俺は【天使兵器】をにらみつけた。
「お前には相応の報いを受けてもらう」
魔力を高める。
「ふん、【天使兵器】には無限の再生能力があると言ったろう。いかにお前の魔法が強大でも、こいつを完全破壊する方法などない」
ライシャムが勝ち誇る。
「方法? あるじゃないか。簡単なやつが」
俺は嘲笑を返した。
「再生できないように粉々に吹き飛ばす。ひとかけらも残らないようにな」
そのためには、最大パワーで攻撃魔法を撃つ必要があるだろう。
まあ、多少の巻き添えが出るかもしれないが、仕方がない。
しょせんは魔族だし、しかも替えの利く雑兵だ。
犠牲が出たところで俺の心は痛まない。
「ティア、俺は今から最大火力の魔法を撃つ。巻き添えを食わないように注意しろ」
「……私のことを気にかけてくださるのですね」
「当たり前だろう。俺にはお前が必要だ」
情報源としても、手駒をまとめる副官としても。
他の魔族とは価値が違う。
「私が……必要……」
ティアがポツリとつぶやく。
眉間を険しく寄せていた。
こんなときにどうしたというんだ……?
まあ、今は気にしている場合じゃない。
「ライシャムもだ。今から撃つ魔法に巻きこまれて死ぬなよ」
「何……?」
「お前にはまだ尋問しなければいけないことが残っている。簡単に死んでもらっては困るんだ」
俺は奴を見据えた。
「極限まで苦痛と絶望を味わってから殺す」
「ぐっ……」
ライシャムの顔から血の気が引いた。
いいぞ、その恐怖だ。
妹は、お前の何倍もの恐怖を味わいながら殺された。
だから当然、お前にもそれを味わわせる。
レイの墓前に、お前の苦鳴を響かせる――。
「そのためにはまず【天使兵器】を片付ける……!」
俺の魔力が最大限にまで高まり、魔力のオーラが黒から黄金へと変化する。
「さあ、消えろ」
右手を突き出す。
「【冥帝黒導波】!」
俺の手から黒紫色の光線が放たれた。
ごうっ……!
一直線に伸びていった光線が【天使兵器】の巨体を飲みこむ。
爆光が視界を白く染めた。
そして、その光が晴れたとき――【天使兵器】の姿は跡形も残っていなかった。
「ば、馬鹿な……!? 【天使兵器】が……神の造り出した巨人が、一撃で――再生すらできないほどの攻撃を……!」
「神の兵器とやらも案外大したことはなかったな」
俺は冷ややかに言った。
「ライシャム、他にも切り札はあるか?」
「ううう……」
「ないようだな。なら――」
俺は奴に向かって手を伸ばす。
魔力を触手状にして、奴の全身を縛り付けた。
「尋問の時間だ」
拷問、とも言うがな。




