2 S級冒険者、『死神』のライシャム
「ご存じなのですか、魔王様」
ティアが横からたずねた。
「S級15位の冒険者、通称を『死神』のライシャム――史上最強のネクロマンサーとまで呼ばれる男だ。ネクロマンサーの能力でアンデッドを従えるだけじゃなく、そのアンデッドを魔導強化改造する能力も備えている」
俺はティアやアリアンロッドに説明した。
「要は、奴が操るアンデッドは通常のそれよりはるかに強いということだ。低級のゴーストですら、改造後は高位魔族に匹敵する」
しかも低級ゴースト程度のしもべなら、いくらでも補充できるだろう。
圧倒的な戦闘力に加え、量産力にも優れている――。
「まさしく無敵の軍団だ」
ティアとアリアンロッドが息を飲むのが分かった。
「我が軍が押されるのも無理からぬこと、というわけですね」
「ああ、奴とそのしもべが相手では、精鋭ぞろいの魔王軍といえども分が悪い」
言って俺は前に出た。
「これ以上、兵を失うわけにはいかない。俺が出る」
「魔王様……」
「心配するな。俺がアンデッド軍団ごときに負けると思うか」
「い、いえ、ですが、先ほど魔王様ご自身が仰ったではありませんか。アンデッド軍団は一体一体が高位魔族に匹敵すると――」
ティアは心配そうだった。
逆にアリアンロッドは平然としている。
どこか『お手並み拝見』といった雰囲気すら漂わせていた。
こういう奴の前で俺が自分の強さを示せれば――彼女の忠誠はより強固になる。
俺が単独で出ようとしているのは、そういった狙いもあった。
もちろん、むざむざ兵力を消耗したくないという理由が一番だが。
「メルディア、それに兵たちも全員下がれ。奴らは俺が一人で相手をする」
俺はメルディアと兵士たちに言った。
「魔王様――」
メルディアが振り返る。
「お前では荷が重そうだ。後は俺がやろう」
「ま、まだだ……我はまだ戦える――」
「下がれ、と言った」
食い下がるメルディアに俺は言い放った。
「お前たちを無駄死にさせる気はない」
「まだ戦えるのに……」
不満そうなメルディアと、
「おお、魔王様……!」
なぜか感動したような様子の魔族兵たち。
……ん?
もしかして、兵たちには俺が『部下の命を気遣う心優しき王』に見えたのか?
俺にとって、お前らは利用価値のある駒に過ぎないんだが。
まあ、いい。
奴らが俺を『心優しき王』だと感動したなら、その感情にも利用価値はある。
「俺がお前たちを守る」
彼らの感情を満たすような言葉をかけつつ、俺はさらに前に出た。
うおおおおおんっ。
敵のアンデッド兵が不気味な声を上げて迫ってくる。
一体一体が高位魔族並の戦闘力を持つ強力な兵団――。
「だが、魔王の魔力を持つ俺にとっては、まったくの無力だ」
右手を前に突き出す。
「【冥帝黒導波】」
ごうううううううううううっ……!
黒紫色の光線が地面を一直線に薙ぎ払った。
その射線上にいたアンデッド兵がすべて消滅する。
「馬鹿な!? 一撃で全滅だと……!?」
驚いたような声とともに、爆炎の向こうから一人の男が現れた。
赤黒いローブに枯木のような手足。
フードから覗く顔は秀麗だ。
「ライシャム……」
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