1 S級冒険者の襲撃
人間たちの軍が、魔王城を襲っていた。
アリアンロッドを配下に従えたのもつかの間、一難去ってまた一難だ。
「魔界には結界が敷かれていて、人間は侵入できないはず――なぜだ」
俺は眉を寄せた。
魔界からは人間界に攻め入ることができるが、逆はできない――というのは魔王軍にとって大きなアドバンテージである。
実際、そのために人間側は今まで不利な戦いを強いられてきた。
だからこそ、魔界と人間界の間の通路を結界装置で塞ぎ、魔界側からも人間界に攻め入れないようにする――という計画が実行されたわけだ。
その際に俺は結界装置を起動するための生贄にされたため、苦い記憶だった。
ともあれ、今はその前提が崩れたようだ。
魔界にとっては一大事である。
「私が【探知】します」
ティアが言った。
俺は、攻撃系魔法以外は不得手だ。
こういうときは魔法の技術全般が高いティアが頼もしかった。
メルディアもアリアンロッドも猛者ではあるが、魔法技術の長けているわけじゃないからな。
「――どうやら結界の一部に『穴』が空いているようです」
「奴らが破壊したのか?」
「現場で調べないと断定はできませんが……おそらく、以前から空いていたものかと」
と、ティア。
じゃあ、もともと結界にほころびがあったということか。
「敵の現在位置は?」
「王都近郊に陣を張っているようです」
ティアが言った。
「こちらも出るぞ。ティア、アリアンロッド、ついてこい」
「えっ、今からですか?」
「奴らを前にして、のんびりする理由がないだろう」
S級冒険者は見つけ次第、討つ。
俺の脳裏に、斬首された妹の姿が浮かんだ。
「奴らを、前にして――」
絶対に許せない。
22人を一人残らず、この世から消し去ってやる。
「魔王様……?」
ティアが訝しげにこちらを見る。
「俺一人でも行くぞ」
「お、お待ちください……私も行きます」
「あたしも当然行きます」
俺はティアやアリアンロッドとともに最前線に赴いた。
無数の怒号や苦鳴が聞こえてくる。
メルディアが兵たちを率いて戦っているのが見えた。
「ひるむな! ここは絶対に死守だ!」
可憐な少女の姿ではなく、禍々しい髑髏の騎士の姿で、口調も相応のものになっている。
魔族たちは剣や槍を手に、敵と戦っている。
その敵は――人間ではなかった。
スケルトンやゾンビなどのアンデッドだ。
といっても、魔族ではない。
あれは――。
「改造アンデッド……!?」
俺はハッとなった。
あんな代物を使役できるのは、世界でただ一人。
「S級冒険者、『死神』のライシャム――」
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