14 忠誠の基準
あなたは魔王として、この魔界をどうなさりたいのですか――?
アリアンロッドからの問いかけに対し、俺の答えは、
「同じだ」
彼女をまっすぐ見つめる。
「先代魔王とな」
「……と仰いますと」
「先代には王としての理想の統治があった。それは俺も聞き及んでいるし、共鳴している。だから俺もディルダイアと同じ道を歩むつもりだ」
俺は厳かに告げた。
「だが理想は、ただ願うだけでは叶わない。実現するためには、抗う者たちに立ち向かわなければならない。そして、そのためには――力が必要だ」
「あたしの力が必要だ、ということですね」
「お前がそれに足る力を持っているならな」
俺はニヤリと笑った。
さあ、今度はこっちが斬りこむ番だ。
「……どういう意味ですか?」
「先代はお前の力に満足していたのかもしれないが、俺は違う。まだお前の力を見ていない」
ゆらり……っ。
俺は全身から魔力のオーラを立ち上らせた。
「お前を試させてもらおう」
「試す?」
「さっきから見ていると、あまり強そうに見えないからな。本当に幹部を務めるだけの力を持っているのか?」
「……あたしが、弱い?」
アリアンロッドの表情がはっきりと変わった。
さっきまでのクールさが息をひそめ、顔が紅潮している。
おそらく彼女にとって、もっとも大切なもの――武人としての矜持を傷つけたのだから当然か。
ただ説き伏せるよりも、こういうタイプは挑発した方が乗ってくる――その見立ては正しかったようだ。
「今の言葉は武人として見過ごせません。あなたに忠誠を誓うかどうかを判断する前に……あたしの力をお見せする必要がありそうですね」
アリアンロッドの体から魔力が立ち上った。
「加減を間違い、少々やり過ぎてしまった場合はご容赦ください」
闘志むき出しだ。
思った以上のプライドが高い奴らしい。
首尾よく配下にできたときは、俺も言動に気を付けないとな。
「全力を出していい。でなければ、お前の方が死ぬ」
「では、お言葉に甘えて――」
ぼこっ、ぼこっ……。
突然、アリアンロッドの体の各部が異様な盛り上がりを見せた。」
「変身能力……!?」
上半身は多少筋肉質になった程度だが、下半身は大きく変化していた。
足が四本に増え、つま先には蹄を備え、下半身全体が毛皮に覆われ――馬のそれへと完全に変形する。
人馬形態。
これがアリアンロッドの戦闘フォームか。
「くおおおおおおおおおおおっ……!」
ケンタウロスと化したアリアンロッドが突っこんできた。
ごうっ!
衝撃波が吹き荒れる。
手にした騎乗槍の切っ先は、おそらく音速を超えているだろう。
魔獣の速力と魔力による破壊、そしてそれらを束ねる戦士としての力――。
これがアリアンロッドの能力か。
「【ライトニングアロー】」
俺は光の矢を放った。
その数は数百。
並の魔族なら跡形も残らず消滅するレベルの攻撃だ。
ばちぃ!
だが、数百単位のそれらは、すべて彼女の周囲ではじけ飛んだ。
「無駄ですよ。あたしの鎧には魔界最高クラスの防御魔法が付与されています。この鎧は名工『グラメル』の最高傑作。たとえ魔王の魔法とはいえ、通じない――」
音速を超える突進攻撃能力に、強固な防御魔法。
攻守ともにハイレベルな猛者といえよう。
「なるほど、よく分かった」
俺はニヤリと笑った。
「あらためて――お前を手駒に加えたいと思ったよ、アリアンロッド。さあ、向かってこい」
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